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個性的な日産・Be-1を振り返る!パイクカー三兄弟の長男

斜め前方から見た黄色の日産・Be-1

当時大きな社会現象ともなった日産・Be-1は40代以上の車好きならご存じのはずだ。1987年から1年少々の期間だけに限定販売されたBe-1だが、瞬く間に完売した。若者の車離れが取り沙汰される最近だが、今でも参考になる新鮮さがあるはずだ。

日産パイクカー三兄弟の次男パオの記事はこちら
日産パオの復刻はいかに?80年代から見たレトロ

真の「不朽の名車」には加われないが魅力的な珍車Be-1

斜め後方から見た黄色の日産・Be-1

日産・Be-1の「パイクカー」としての生い立ちは各方面で触れられているので割愛する。また、Be-1に続く「次男パオ」については以前の記事で取り上げたのでご覧いただきたい。Be-1の持つ魅力は一にも二にも個性的な内装と外装のデザイン*1である。中身については後述するが、誰からも愛される「不朽の名車」には幾つかの共通点がある。

  1. 庶民的な車種
  2. どんな外装色でも似合う
  3. 古さの中にも輝きを放つ

Be-1も1987年の発売から早くも30年以上が過ぎた。現代の目線で捉えても決して古臭さを感じさせず、斬新に映りはしないだろうか。同様に「不朽の名車」としての常連は初代フォルクスワーゲン、初代ミニ、シトロエン・2CV、フィアット・500(チンクエチェント)の先祖ヌォーヴァ500などである。そして、国産車ならばスバル・360も顔を並べるだろう。

いずれの車種もかわいらしい見てくれだが、実は本気で開発された車種である共通点を持っている。スバル・360を例に取れば、そのころ「絶対不可能」とまで言われていた大人4人乗車を360cc*2で実現した。そのため、RR*3駆動方式、FRP*4製の屋根なども取り入れられている。また、いまだ一般的ではなかった10インチ*5タイヤ*6の採用やステアリングホイール*7もグラム*8単位で軽量化するなど、徹底的な努力が随所になされた。このように大真面目につくられたからこそ、にじみ出る「味」が「不朽の名車」と形容されるゆえんである。

今回ご紹介するBe-1も先述した三つの共通点を兼ね備えている。しかし、車を愛する技術者が開発した車種ではなかった。Be-1は工業製品の車が持つ魅力をうまく見抜いた「日本人デザイナーの作」と換言できる。その意味からも真の「不朽の名車」の仲間入りをすることはないBe-1だが、いまだにどこか妙味に富んだ珍車である。

デザインがBe-1を彩る全て

日産・Be-1の運転席前面の計器盤

Be-1の製造過程を見ると、フィアット・パンダから派生したフィアット・500の関係性と似ている。元々Be-1も後継となるパオやフィガロと同じく、1982年登場の初代K10型マーチを原型にしている。ちなみに、Be-1の型式はBK10型である。「実用的な小型車」という点でパンダとマーチは類似しており、そこから生まれたデザイン重視の車種がフィアット・500であり、Be-1であった。

Be-1が優れ物なのは高級一辺倒だったバブル経済*9真っただ中にあって、質素に仕上げられた点である。エンジンもK10マーチ用の標準エンジンだった、52馬力のMA10S型 1・0L直列4気筒SOHCである。燃料供給装置は電子制御キャブレター*10式、トランスミッション*11は5速MT*12か3速AT*13が用意されていた。

Be-1は当時60万円台くらいで購入できた初代マーチのシャシー*14に大体手作業で仮装をされ、新車価格はマーチの2倍以上となる139万6000円から145万6000円の値段設定であった。Be-1はキャンバストップ*15仕様も用意されたが、質素な中にありながら「一点豪華主義」のような印象だった。

車内は横基調にパイプを組み合わせたようなインパネ*16に、丸い速度計や空気の吹出口がおしゃれだ。外装のデザインは「初代ミニ」に似ているとする意見もあるようだが、そんなふうには見えない。後続のパオがフランス*17っぽさが醸し出されていたが、Be-1はあくまで独自のデザインを誇っていると感じる。当時は角ばった外装の車種が有り触れていたので、突如出現した丸みを帯びたBe-1は独創的だった。ただし、奇をてらわないデザインが功を奏し、今でも十分に引き付ける輝きを放っている。

安全性能がうるさくなかった時代だったため、側面や後部の窓面積が広い。車内も簡素であるため、実際に運転席に腰掛けた際の開放感は現代の車の比ではない。致し方ないとはいえ、このようなつくりの現代車は皆無であるのが残念だ。加えて、キャンバストップ装着車であれば、秀でた走りは見込めないとしても、さぞおおらかな気持ちにさせてくれることだろう。

Be-1のエンジンと動力性能

日産・Be-1のインテリア

Be-1の動力性能に関しては前項でも少々触れたように期待はできない。ただし、街乗りなら現代でも過不足のない性能を発揮してくれるだろう。しかし、いざ高速道路や登坂路ともなると、間違いなくもっと馬力が欲しくなる。

Be-1 は初代マーチが原型であるのは前述した通りだ。この初代マーチの動力性能については競合車のトヨタ・スターレットが1・3Lを搭載していたこともあり、当時でも非力感を拭い去れなかった。面白みのないエンジンであったが、誕生から30年が過ぎて外観に見合う懐古の情をかき立ててくれるだろう。

さらに、このBe-1のエンジンに触れておこう。このMA10S型と称されるエンジンは1982年の初代マーチ登場とともに搭載された。シリンダー*18ブロックにはアルミニウム*19が採用され、987ccの排気量から52PS*20 / 6000rpm*21の最高出力と7・6kgm*22 / 3600rpmの最大トルク*23を発生した。ボア × ストローク*24は68・0 × 68・0ミリのスクエア*25タイプ*26のSOHCエンジンであった。

このエンジンに大きく手を加えた上、スーパーチャージャー*27 + ターボ*28で武装したマーチ・スーパーターボが後に登場し、ラリー*29の常連車となるほどだった。このエンジンがBe-1に搭載されていたらと想像したが、いかんせん古風な風体と不似合い極まりないと評さざるを得ない。

もしBe-1を所有される機会があるなら、出力不足を補うためにも5速MTを強くお勧めしたい。

まとめ

斜め後方から見たキャンバストップ全開の黄色の日産・Be-1

今回は30年以上前の国産車であるBe-1についてご紹介してきた。Be-1の魅力をデザインのみと断言してしまったが、どこか商業的なにおいを感じ取ってしまったからかもしれない。

発売された1987年はBe-1に対して懐旧の念に駆られるとする声はなく、見た目が素敵な車種として受け入れられた。この先鋭的なデザインは海外にも少なからず影響を与えたそうだ。Be-1はマーチを駆逐するといったことはなく、1989年のパオから1991年のフィガロと続き、パイクカーとしての幕を下ろした。どれも初代K10型マーチから派生した車種であったが、メカニズム*30面での魅力を若干かさ上げしてくれていたら卓越した一台になっていたと思う。

今でもBe-1のデザインが優れているのは間違いなく、中古車もたくさん出回っているようだ。高額だと新車価格と変わらないものまである。ただし、冷静に「手に入れたいか」と問われれば首を横に振ってしまうだろう。

Be-1の時代以降にも、スバル・ディアスクラシック、ダイハツ・ミラジーノ、光岡自動車など懐古を装った車種が多く発売されてきた。これらの車種の中でも、Be-1は手の混んだ1台であると断言できるが、やはり残念ながら「その類」の域を脱するまでには至らないのである。デザイン以外の「操る楽しさ」には乏しいBe-1だが、一時的に自動車市場を沸かせたのは周知の事実である。

このBe-1に続いてS13型シルビア、R32型スカイライン、初代セフィーロ、初代シーマというように、80年台終盤の日産は数々の良い車を世に送り出してきた。その布石のためにBe-1は先駆者ならぬ「先駆車」として走り出したのかもしれない。

日産にはプラットフォーム*31を「一つにする」ばかりでなく、あの時のような「こだわりのある日本車」を出してもらいたいものだ。

(出典:日産自動車株式会社

*1:【design】意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:(cubic centimetre)立方センチメートルを表す記号。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【和製語rear-engine, rear-drive】後部エンジン後輪駆動。自動車の後部に搭載したエンジンによる後輪駆動方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【fiberglass reinforced plastic】繊維強化プラスチック。ガラス繊維や炭素繊維などを補強材として埋め込んだ合成樹脂複合材料。軽くて機械的強度・耐食性・成形性にすぐれる。小型船舶の船体,航空機の機材,浴槽・波板・保安帽などに用いる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【inch・吋】ヤード‐ポンド法の長さの単位。1フィートの12分の1。2.54センチメートル。記号 in/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【tire; tyre】車輪の外囲にはめる鉄またはゴム製の輪。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【steering wheel】自動車のハンドル。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【gramme; gram・瓦】質量の単位。国際キログラム原器の1000分の1の質量。セ氏4度の水1立方センチメートルの質量にほぼ等しい。記号g/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:投機によって生ずる、実態経済とかけはなれた相場や景気。近年の日本では、1980年代後半~90年代初頭にかけて起こった地価・株価の高騰をいう。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【carburetor】内燃機関で、燃料と空気を程よく混合して爆発性の混合気をつくり、シリンダー内に供給する装置。揮発器。気化器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【transmission gear】自動車などの変速装置のギア。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【manual transmission】自動車の手動変速機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:(automatic transmission)自動車などで、自動的に変速段の切替えを行う装置。自動変速装置。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【châssis(フランス)・chassis(イギリス)】自動車などの車台。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:〔和製語 canvas+top〕屋根がキャンバス地で張られ,折り畳みや取りはずしが可能な自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:〔instrument panel から〕自動車などで,運転席に設けた計器盤。多く,計器や操作スイッチを並べた前面のパッド入りパネル全体をさす。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:【France・仏蘭西】ヨーロッパ大陸西部の共和国。古くはガリアと称しローマ帝国の属州、5世紀にフランク王国が成立、その後分裂したが14~15世紀の百年戦争を経て統一国家を形成、17~18世紀ヨーロッパ大陸に覇を唱え、アジア・アフリカに植民、高度の近代文化を築いた。1789年のフランス革命で第1共和制が成立、のちナポレオン1世による第1帝政、その没落後、王政復古および第2共和制・第2帝政を経て1871年第3共和制、第二次大戦後第4共和制、1958年ド=ゴールによる第5共和制で今に至る。面積55万1500平方キロメートル。人口6140万(2006)。首都パリ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【cylinder】往復運動機関の主要部分の一つ。鋼製または鋳鉄製の中空円筒状で、その内部をピストンが往復して所要の仕事を行う。気筒。シリンドル。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*19:【aluminium】(ラテン語で「明礬」の意の alumen から)金属元素の一種。元素記号 Al 原子番号13。原子量26.98。地殻中に広く多量にアルミノケイ酸塩として存在。銀白色の軽く軟らかな金属で、比重は鉄の3分の1。展性・延性に富む。強固な酸化被膜ができるため常温では腐食しない。酸に弱い。食器・台所用具・建築の材料、軽合金の主成分として広く用いる。軽銀。アルミ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:(Pferdestärke)(ドイツ)(horsepower)動力(仕事率)の実用単位。1秒当り75重量キログラム‐メートルの仕事率を1仏馬力といい、735.5ワットに相当する。記号 PS 1秒当り550フート‐ポンドを1英馬力(746ワット)という。記号 HP,㏋,hp 日本では1999年以来仏馬力だけが特殊用途にかぎって法的に認められている。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*21:【revolutions per minute】エンジンやタービンなどの毎分回転数。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:【フランス kilogrammètre】エネルギーまたはトルクの重力単位キログラムメートルを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:【torque】原動機の回転力。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*24:(stroke)蒸気機関・内燃機関など往復機関で、シリンダー内でピストンが一端から他端まで動く距離。衝程。ストローク。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*25:【square】正方形。四角形。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*26:【type】型。類型。典型。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*27:【supercharger】過給機に同じ。狭くは、ターボ‐チャージャーに対して機械的エネルギーを利用する過給機を言う。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*28:【turbo-charger】過給器の一種。排ガスのエネルギーを利用する過給器。排気タービン過給器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*29:【rally】指定された区間を一定の条件で走る自動車競技。規定の時間通りに走るものと速度を競うものとがある。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*30:【mechanism】機械装置。仕掛け。機構。仕組み。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*31:【platform】〔立つための台の意〕自動車生産で,異なった車種の間で共通に用いる車台。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)