人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

他国と隣接するタイの国境周辺に醸し出される雰囲気とは?

タイとカンボジアの国境

島国の日本には陸続きの国境はなく、なかなか思い描けない。しかし、タイは外国と陸でつながっている。一度国境をまたげば、文化、言語、法律、貨幣などが塗り替えられるのだ。では、タイ側から見た各国との国境付近は一体どのようになっているのだろうか。

タイの隣国は4カ国

真っ赤なラン

タイはラオス*1、ミャンマー*2、カンボジア*3、マレーシア*4の4カ国と陸続きで接している。興味深いのは資本主義のタイと社会主義のラオス、仏教国のタイとイスラム教国のマレーシアとが陸路で行けることである。それぞれの国境に注目してみたい。

タイの国境がある場所

近隣各国と隣接している都市は無数に存在するが、特色のある場所をいくつか取り上げてみたい。

イーサーン地方ことタイ東北部のノーンーカイ県、ムックダーハーン県、タイ南部のサトゥーン県、ソンクラー県には入国管理局管轄の国境が設けられている。つまり、そこでは空港の入国管理局と同様に出入国審査や入国税の支払いなどが行われている。その他の陸路で対面する一部の国境施設では一時的な出入国を認めている箇所もある。

空路の国境と陸路の国境の明白な違いは自動車の搬入の可否だろう。陸路の国境では自動車自体の持ち込みの認否や運搬する荷物への関税手続きなども同時に行われている。近隣住人は出入国書の申請を条件に、双方の国に買い物・仕入れのための短期出入国が認められている。

特にタイ南部の国境に隣接するサダオと国境から50キロほど離れたハートヤイ(ハジャイ)が大都市のため、マレーシア側からの短期入国者が頻繁に往来している印象だ。

大規模国境の状況

夕暮れの空港とノックエアのプロペラ機

厳密にいえば国境に「大規模」も「小規模」も区別はない。しかし、それぞれの国境に注目して観察してみると興味深い差異があるのだ。

例えば南部ソンクラー県の国境のサダオは陸路での物流拠点にもなっており、大型トラック*5やコンテナ*6トレーラー*7などが列をなして出入国手続きを待っている。

国境では物流貨物と渡航者の審査は別々に行われる。渡航者に対しては空港の出入国審査と同様の雰囲気で行われ、入国審査官がパスポートを受け取り、渡航者各人のパスポートの有効期限、滞在日数違反の有無、渡航目的などを精査する。車両の検査は荷物が申告通りか、車両自体が国境を挟む両国の規定に違反していないかなどの項目を検査する。国境を通過する渡航者と車両の数は非常に多い。そのため、それを隠れみのに不審者・不審車両が紛れることを未然に防ぐ必要があるため、審査官たちは厳格に検査している。

国境を越えてくる不審者に関する事件

2017年1月には米国の麻薬密売の容疑者がタイ南部のサダオ国境を通過してタイに入国していた。その後米国政府からの要請によって身元照会した結果、容疑者がタイ国内の国際学校で英語教師になっていた事件も発生した。

小規模国境の状況

タイの山間に沈む夕日

例えばタイ東北部のラオスとの国境ムックダーハーンである。あまり知られていないこの町の国境は公民館のようなこぢんまりとした建物があるだけだ。だから、初めて訪れたとしたら、あっけにとられるかもしれない。

自動車用の道路もあるのだが、大型車などは滅多に見掛けない。地元住民が国境を行ったり来たりするための用途なのか、通過する際もまるで「ドライブスルー*8」のようだ。もちろん降車は不要で、通行の書類の受け渡しだけが行えるようになっている。

外国人観光客はほとんどおらず、現地人の行き来があるだけなので、牧歌的な雰囲気が保たれている。優々閑々とした入国審査官が多く、たまに訪れる外国人観光客にも懇切丁寧に書類の書き方を教えてくれるはずだ。

社会情勢が直接的に反映される出入国審査

タイの入国審査官は日本とは異なり警察組織の一員となる。警戒時期になれば同一人物とは思えないほど仮借なく取り締まることがある。特に法律が改正されたり、なんらかの重大事件が発生したりした場合などである。

半面2017年6月には判決公判を三日後に控えたインラック・シナワトラ元首相が陸路でカンボジアを経由して国外に脱出した。このニュースが報じられた際にはインラック元首相の兄が元警察官僚だったため、陸路での越境の審査において、なんらかの「取引」の存在を大部分の国民が懐疑的にみている。

まとめ

ラオスのゴールデントライアングル

私たち日本人には実感の湧かない「陸続きの国境」だが、タイのような大陸にある国家の場合、陸路の国境が物流や移動に重要な役目を担っているのだ。

出入国管理に関しては国境を越える全員を詳細に調査できるわけではない。従って、不審者が陸路で国境を越えて罪を犯すことも頻発しているのだ。タイ政府がカンボジア人やミャンマー人の不法就労を躍起になって取り締まっていることからも、相当数の密入国者がタイ国内に潜伏しているはずだ。

さらに、タイ北部、ミャンマー、ラオスの国境付近では「ゴールデントライアングル*9」と呼ばれる麻薬の製造や密輸が行われている悪名高き地帯がある。地理的には陸続きの国境によって接しているものの、生活水準や法律などが異なる。そのため、関係国で一斉に対処することができず、対処が後手に回ってしまうようである。

いずれにせよ、陸地で往来できる国境は島国の日本にない概念である。一歩足を踏み出すと文化から何からががらっと変貌する感覚は一種独特に映るはずだ。

そして、境のない「すてきな旅の思い出」になると思うのだ。

*1:【Laos】インドシナ半島北東部にある人民民主共和国。メコン川中流東岸に位置し,国土の大部分を山岳・高原が占める内陸国。米・チーク材・スズなどを産する。住民はラオ族が主で仏教を信奉。1893年フランスの統治下に入ったが1953年独立。75年に立憲君主制から共和制に移行。首都ビエンチャン。面積24万平方キロメートル。人口612万(2009)。正称,ラオス人民民主共和国。〔「羅宇」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【Myanmar】インドシナ半島の西部,ベンガル湾とアンダマン海に臨む連邦共和国。七管区・七州から成る。米・チーク材・ゴム・石油・スズなどを産する。上座部仏教が盛ん。1948年,イギリスから独立。首都ヤンゴン(旧称ラングーン)。2006年に首都機能をネイピードー(ピンマナー)に移転。面積68万平方キロメートル。人口5322万(2004)。ビルマともいう。正称,ミャンマー連邦共和国。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【Cambodia】インドシナ半島南部,タイランド湾に面する立憲君主国。1863年フランス保護領になったが1953年独立。70年クーデターで王制から共和制に,76年民主カンボジア政府を樹立。その後内戦が続き,79年ベトナムに支援されたヘンサムリン派が国土の大部分を支配してカンボジア人民共和国を樹立。民主カンボジア(日本が承認)側はタイ国境の山地に逃れて二つの政府が並立していたが,91年国連による和平協定が締結されて内戦が終結,93年シアヌークを擁して現国名に改称。古くインド文化の影響を受けたクメール族の国で,メコン川の中流域とトンレサップ湖岸で米作が盛ん。アンコール-ワットやアンコール-トムなどの遺跡がある。住民は小乗仏教を奉ずる。首都プノンペン。面積18万1千平方キロメートル。人口1340万(2008)。カンプチア。正称,カンボジア王国。〔「柬埔寨」「柬蒲塞」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【Malaysia】マレー半島南部とカリマンタン島北部から成る立憲君主国。1963年マラヤ連邦・サバ・サラワクなどが結成した連邦国家。一三州から成る(結成当初参加したシンガポールは65年分離・独立)。ゴム・スズの世界的な産出国。マレー人のほか中国系人・インド系人が居住し,民族構成は複雑。主要言語はムラユ語と英語。イスラム教を国教とする。首都クアラルンプール。面積33万平方キロメートル。人口2840万(2010)。正称,マレーシア。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【truck】貨物運搬用の自動車。貨物自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【container】貨物輸送用の金属製の容器。荷くずれを防ぎ,積み降ろしの省力化を図ることができる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【trailer】動力をもたず,他の牽引車に引かれて荷物や旅客を運ぶ車。付随車。牽引車を含めていう場合もある。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【drive-through】自動車に乗ったまま買い物などができる方式。また,その店。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【Golden Triangle】〔黄金の三角地帯の意〕ミャンマー・タイ・ラオスの国境にまたがる山岳地帯。世界最大のケシの栽培地のひとつ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)