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進化した野球?採用されつつある2番打者最強論!

強振する右打者

大リーグでは2番に長打力のある打者を据えるチームが珍しくない。これまで日本プロ野球では、2番打者は「つなぎ役」が一般的だった。しかし、最近では「大砲」を目にする機会も増えた。今後、この打順は主流になっていくのだろうか。

2017年9月20日:用字用語の整理。

日本の伝統的な2番打者とは?

日本プロ野球の2番打者における役割は、バントや右打ちなど小技にたけ、走者を進塁させる「つなぎ役」としての印象が強い。

これまでも安定して上位に入るチームには、その役割を着実にこなす2番打者が存在した。東京ヤクルトスワローズの宮本慎也氏、中日ドラゴンズの井端弘和氏、読売ジャイアンツの川相昌弘氏が好例だろう。彼らの「献身」によって、黄金期を支えたことは言うまでもないだろう。

共通点として挙げられるのは、バント*1のみならずヒットエンドラン*2や流し打ちで走者を次の塁へ進める。また、走者がいない場面でも、ファールで粘り、出塁して好機到来に結び付ける。そして、チームのために自己犠牲もいとわず、それらを実行できる技術が高い水準で備わっている点だ。

現在においてセ・パ両リーグを代表する2番打者は、広島東洋カープの菊池涼介選手ではないだろうか。前述した役割の他にも、俊足で出塁率が高い1番打者の盗塁を手助けしたり、盗塁警戒から増加傾向の「外角球」をうまくさばいたりすることも重要になってくる。また、時には強打で打点を挙げるなど、打席での「仕事」は非常に多いが、今シーズンも好調なチームをけん引している。

大リーグにおける2番打者の考え方

そもそも大リーグ*3では、早い回からバントをすることに否定的だ。だから、序盤は基本的に強行策で打つことが多い。終盤に1点を争うような接戦の場面で、ようやくバントを用いていくことが多い。

序盤からバントによってアウトカウント*4を相手に献上するのではなく、強打者を並べて精神的重圧を与え、一気に大量得点を奪いにいく考え方である。

昨シーズンは、大リーグの30球団中13球団が2番に長打力のある選手を起用しており、20本塁打以上を記録している2番打者も少なくない。むしろ2016年シーズンは、両リーグのMVP*5が2番打者から選ばれているほどだ。

日本プロ野球でも、近年は2番に強打者を入れ、成功しているチームが増えている。その代表例が2015年の東京ヤクルトスワローズだろう。2番に川端慎吾選手を起用し、3番山田哲人選手、4番畠山和洋と並べた打線。川端選手が首位打者、山田選手は本塁打王と盗塁王、畠山和洋選手は打点王と、打撃タイトルを総なめにし、圧倒的な打撃力でセントラルリーグ*6を制覇した。

今シーズンでは東北楽天ゴールデンイーグルスのペゲーロ選手、巨人のマギー選手などの起用が成功例だろう。

2番に強打者を置く根拠

なぜ2番打者に強打者を置くと得点率が上がるのだろうか。それは、ここ数年注目されているセイバーメトリクス*7の理論に基づいている。

その理論によれば、最も得点力向上に効果的なのは、1番打者から良い打者を順に並べていくことである。1番打者と4番打者とでは、年間で20打席前後、回ってくる打席に差が生まれる。ならば、良い打者であればあるほど、打順を上げる必要がある。そして、打席数を増やすことが、必然的に得点率の向上につながるとするのである。

さらには、走者の有無やアウトカウントなど、各打順に回ってくる高確率の「場面」も統計的に分析されている。それを基に1番から9番までの打順を三つの重要度に分類している。

  1. 最も重要 … 1・2・4番打者
  2. 次に重要 … 3・5番打者
  3. 重要度が低い … 6~9番打者

加えて、優秀な選手であることを前提に、各打順には望ましい条件がある。

  • 1番打者 … 「出塁率が高い」打者。
  • 2番打者 … 併殺を回避できる「俊足」の打者。
  • 4番打者 … 出塁率よりも「長打率の高い」打者。

4番打者については、アウトカウントが多い場面が多い。だから、四球などで好機をお膳立てする出塁より、打点を必要とされているためだ。

これらがセイバーメトリクスによる、得点率の高い打順の組み方だ。つまり、2番打者には小技がきく器用な打者ではなく、OPS(出塁率 + 長打率)の高い選手を起用することになる。これらを踏まえると、楽天のペゲーロ選手や巨人のマギー選手の起用もうなずける。さらに、首位打者であり併殺を回避できるヤクルトの川端選手は、理想にぴったり合っていると言えよう。

まとめ

セイバーメトリクスに基づいて、大リーグで主流となっていること。また、日本プロ野球でも2015年のヤクルトの成功事例から、「2番最強打者説」は確実に浸透しつつある。

ただし、今シーズンの広島のように投手力が安定し、失点がある程度計算できれば、当然別の見方もできる。それはランナーを着実に送って、1点を積み重ねることができるチームが、安定して上位に入っているからだ。これまでの歴史が示しているもう一つの本流である。

2015年のヤクルトにせよ、今シーズンの楽天や巨人においても、投手力がやや落ちる。または、2番打者を固定できなかった。そんなチーム事情に引っ張られて、攻撃的オーダーを組まざるを得なかったことは否めない。

しかしながら、2番に強打者を入れる采配は球界に新しい考え方をもたらし、野球ファンに新鮮な面白さを与えているのも事実である。

チームの順位や状況分析に合わせて、1点を手堅く取りにいくオーダー、強打者を上位に並べて攻撃を前面に出すオーダーを使い分けても面白いかもしれない。各チームが特長を生かし、独特の打順によって対戦するのは、なかなか見応えがあるはずだ。

そして、野球ファンの歓声と嘆声の鳴り響く、白熱した試合がなお一層増える。これが究極の「源流」であるはずだ。

*1:【bunt】野球で,バットを振らずに軽くボールに当て,内野にゆるく転がすこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【hit-and-run】野球で,投手の投球と同時に走者が走り,打者は必ずその球を打つ攻撃法。エンド-ラン/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:〔和製語 out+count〕野球で,攻撃中のチームのアウトの数。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【most valuable player】スポーツ競技で最も優れた活躍をした選手。最優秀選手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:〔和製語 Central League〕日本のプロ野球リーグの一。1949年(昭和24)結成。六球団が所属する。セ-リーグ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【sabermetrics】野球データを統計的に分析し,選手の評価や戦略の立案などを行う手法の一。野球の伝統的戦略に新しい価値(犠牲バント・盗塁の効力は小さいなど)を与えたほか,選手の過去の成績から将来の成績を予測する手法も開発された。大リーグでは近年,これを実戦に採り入れるチームも登場している。〔アメリカ野球学会(Society for American Baseball Research)の略である SABR と,metrics(測定基準)からの造語〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)