人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

マニュアル車とオートマチック車の長所と短所

スズキ・スイフトスポーツの内装

国内の乗用車は2011年にオートマチック車の販売数が98・5%を占め、マニュアル車はまるでシーラカンスのような存在になってしまった。果たしてその「生きた化石」の復権はあり得るのだろうか。マニュアル車とオートマチック車の長所と短所を分析してみたい。

マニュアル車とオートマチック車の世界的な状況

欧州の自動車における分類別AT車の普及率

日本は米国と同様で、オートマチック車*1大国であることは周知の事実だ。しかし、昨年の資料だと米国のオートマチック車の割合は97%超なので、日本の方が一段と高い比率なことが分かる。

マニュアル車嗜好(しこう)家にとっては、もはや日本にいる限り絶望的な心境になりかねない。しかし、欧州*2に目を向けてみると、ほっと胸をなで下ろすはずだ。上に欧州連合*3での状況を物語る2011年版の資料がある。

これをよると「Luxury(ラグジュアリー)*4」高級車は2001年以降オートマチック車の割合が100%に限りなく近い。「Upper*5 Medium*6」中型車では比率が下がっているものの35%以上は未だマニュアル車なのである。それ以外のスポーツカー*7・スポーツタイプ多目的車(SUV)・小型車なども全て60%以上がマニュアル車である。

オートマチック車は1939年にゼネラルモーターズ社の前身であるGMことゼネラル・モータース社が世に放った、「オールズモビル」を発端とするといわれている。大東亜戦争後に米国ではガソリンが安値になった。そのため、5・0Lや7・0Lの大排気量エンジン*8とともにオートマチック車も急速に広く行きわたり、1965年には早くも90%を超えた。日本では1960年代に入ってオートマチック車の普及が始まっている。

そもそもトランスミッションとは何か?

日産・GT-Rのパワートレイン

では、トランスミッション*9について簡単に説明してみよう。乗用車用の通常のエンジンはピストン*10の上下運動を回転運動に変換し、それをエンジン後方から取り出すようになっている。エンジンはアイドリング*11時で分速800回転ほどしており、最大限で分速8000回転くらいまでに達することができる。

これを自転車になぞらえると明快だ。発進時は力を込めてゆっくりと出発し、足でこぐ間隔を短くすれば速度も上昇する。力を込める感覚が「トルク*12」であり、足の回転が「馬力」だ。しかし、俗にいう「ママちゃり*13」では、時速20キロメートル以上にもなれば、競輪選手に負けず劣らずの足の回転をしたとしても、速度はもはや頭打ちだろう。なぜなら、エンジンが分速8000回転まで振り切れている状態であるからだ。

スポーツカーならば、ここに変速機が付加される。発進時は軽い1速か2速で進み、速度の上昇に従いギア*14も上げてやる。すると、足の回転は同じくらいでも、飛躍的に速度を出せるのだ。坂道を登るときの負担もこれにより大幅に軽減できる。

乗用車のトランスミッションも、原則的にはこれと同じと考えてよい。しかし、自動車では変速時にエンジンとトランスミッションを一時的に切り離す必要があり、これがマニュアル車でいう「クラッチ*15」の役目である。

マニュアル車とオートマチック車の一長一短

トヨタ・AE86・カローラの内装

さて、いよいよマニュアル車とオートマチック車の「美点と欠点」についてである。先に結論を述べるが、オートマチック車に欠点はない。ただし、これは正確に操作した場合に限る。「正しくない」とはペダル*16の踏み違えや整備不良を指し示している。

マニュアル車は市街地において、信号待ちや一時停止からの再始動のたび、アクセル*17を微妙な加減で踏んでクラッチを適切につなぐ必要がある。交通渋滞ともなればクラッチ操作を何十回と繰り返すことになるので、足がつりそうになることもある。

加速してからも2速・3速と変速機を減速比の小さい方へ移していくため、両手両足が慌ただしい。ただ、高速道路ではトップギア*18に固定して、ハンドルとアクセルを保持していればいいので造作ない。

マツダ・アテンザのマニュアル車にはクルーズコントロール*19を追加することも可能だ。ただ、クルーズコントロールで定速走行中に上り坂に差し当たって、事足りなくなれば再度クラッチを踏んでギアを落とさなければならない。

昔の車であればバッテリー*20上がりなども頻発した。マニュアル車であれば誰かに押してもらって、2速でぽんとクラッチをつなげば、エンジンの再始動ができたのだ。これがマニュアル車のちょっとした優位性と利便性だった。しかし、今ではロードサービス*21も直ちに駆け付けてくれるし、そもそもバッテリーもそう上がらない。

マニュアル車よりオートマチック車の方が速く走れることは証明済みである。このように特段欠点も無く、操作もたやすいオートマチック車が広まらない理由は見当たらない。

まとめ

トヨタ・AE86・カローラの遠景

ここまで叙述してきたように、通常の使用状況ではオートマチック車がマニュアル車より卓越している。車を単に移動手段や道具と捉えた場合、疲労を軽減しつつ目的地まで到着できるオートマチック車は最先端の快適さである。

しかし、マニュアル車を乗り継いできた方ならオートマチック車が決して優等でないことを察するだろう。車は運転手の思考を読み取っているわけではなく、アクセルの踏み加減と路面の状況から判断しているだけだ。そのため、運転手の思考と予測を裏切る変速をしてしまうことが頻出する。

マニュアル車の最良は車が運転手に従順であることなのだ。欧州では車の運転自体を楽しむ方が多いから、マニュアル車が生き永らえていると聞く。カーブを曲がる、加速する、減速する。その一つ一つの動作を車の習癖を洞察しながら操ることが楽しみになるのだ。

極論すれば、オートマ*22・トラクションコントロール*23・ABS*24・電子式サイドブレーキ*25・衝突防止安全のどれもが「要らぬお世話」である。床下で何が起きているのかを運転手が感じられないことが、直感から乖離(かいり)してしまい気持ち悪いのかもしれない。できるだけ単純な構造に、研ぎ澄まされた「運転手という名のセンサー*26」があれば十分なのである。

恐らくマニュアル車の楽しみはバイクと共通点が重複する。楽をするためではなく、運転を楽しむためにマニュアル車やバイクに乗る。もっとも至れり尽くせりのマニュアル車と比較したら、「バイク乗り」からお叱りを受けるかもしれないのだが。

運転自体が快い骨折りとなればいいはずだ。「時風の坂道」に幾度となくエンスト*27しながらも現代にたどり着いた、そんな気骨のあるマニュアル車に出会いたいものだ。

(出典:スズキ株式会社ICCT日産自動車株式会社トヨタ自動車株式会社

*1:オートマチック-トランスミッションを装備した自動車。オートマチック車。AT 車。ノークラッチ車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:六大州の一。アジア大陸の西部に連なる半島状の大陸と付属の島々からなる。北は北極海,西は大西洋に面し,南は地中海を隔ててアフリカ大陸に接する。北西部にゲルマン民族,南西部にラテン民族,東部にスラブ民族が居住し,大小四四の独立国がある。一般に経済や文化の水準が高い。エウロパ。〔「欧羅巴」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:〔European Union〕経済・通貨統合の実現,共通の外交・安全保障政策の設定,国家主権の一部移譲などを中心とする,ヨーロッパの地域統合体。1991年のマーストリヒト条約で設立が合意され,93年発足。EU。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:豪華なさま。ぜいたくなさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:他の外来語の上に付いて「上層の」の意を表す。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【medium】程度や大きさが中間のもの。中位。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【sports car】運転すること自体を楽しむために作られた車。実用車に比べ車高が低く,加速性能にすぐれている。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【engine】種々のエネルギーを機械的力または運動に変換する機械または装置。機関。発動機。特に,内燃機関。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【transmission】トランスミッション-ギアの略。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【piston】蒸気機関・内燃機関などのシリンダー内を往復運動する,円柱形または円盤状の部品。活塞(かつそく)。喞子(しよくし)。吸い鍔(つば)。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【idling】機械・自動車などのエンジンに,負荷をかけず低速で空転させること。暖機運転。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【torque】回転軸のまわりの,力のモーメント。棒をよじる力や原動機の回転による駆動力を示すのに用いる。ねじりモーメント。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:〔「ママが乗るちゃりんこ」の意〕俗に,生活用途に特化した仕様の自転車のこと。小型で乗降が容易な形状で,物を入れるカゴがついたもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【gear】 歯車。また,歯車を組み合わせた装置。ギヤ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【clutch】クラッチ-ペダルの略。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:【pedal】自転車・オルガン・ピアノ・ミシンなどについている踏み板。ペタル。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:〔アクセレレーター-ペダル(accelerator pedal)の略〕自動車の加速操作に用いるペダル。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:【top gear】エンジンの変速機が,最高速度になるギア。トップ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*19:【cruise control】自動車の速度を一定に保つ機能。また,その装置。速度を設定すれば自動的に走行するため,アクセルを踏み続ける必要はない。オート-クルーズ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*20:【battery】電池。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:〔和製語 road+service〕道路上で行う故障車の牽引(けんいん)や修理。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:オートマチックの略。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:【traction control】駆動力制御装置。すべりやすい路面などで発進したり加速するとき,過度な駆動力で車輪が空転するのを抑えるため,エンジン出力を絞ったり車輪にブレーキをかけたりする自動制御装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*24:【antilock-brake system】自動車で,ブレーキをかけたとき車輪がロックしないよう,車速と車輪回転速度を検出してブレーキを自動的にコントロールするシステム。車輪と路面間の摩擦力と車輪の回転を確保することで,制動安定性と操縦性を得る。アンチスキッド。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*25:〔和製語 side+brake〕自動車の手動ブレーキ。駐車時に用いる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*26:【sensor】音・光・温度・圧力・流量など,対象となる物理量を検知し,処理しやすい信号に変換する素子。また,その装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*27:〔エンジン-ストップの略〕自動車などの,エンジンが不意に止まってしまうこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)