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SUVの原点「三菱・ジープ」の歴史をさかのぼり一考する

斜め前方から見たツートーンカラーの三菱・ジープJ3

ご年配の方なら三菱・ジープの響きに憧憬(しょうけい)を感じるだろう。三菱・ジープは米国製Jeep(ジープ)に端を発する「二番煎じ」の車種といえる。しかし、1953年~1998年まで日本において独自の進化を遂げた、類まれなる「亜種ジープ」でもあるのだ。

三菱・ジープの歴史概要

斜め前方から見たツートーンカラーの三菱・ジープJ20

ジープ*1は元々大東亜戦争で米軍が使用したMB・GPWが源泉の四輪駆動小型トラック*2である。日本では戦後になってGHQ*3管理下の警察予備隊(現陸上自衛隊)向けの車両増強が行なわれることとなった。これに当たって、当時トヨタ・ジープBJ型、日産・4W60型も入札したが、結果、三菱・ジープが採用された。ちなみに、先の2車種が、後のトヨタ・ランドクルーザーおよび日産・サファリである。

三菱・ジープは1953年のCJ3Aを皮切りに、翌年にはCJ3Bへと移行するが、本家のMB・GPWと比べてボンネット*4に厚みがある。これが本家ジープとの外観上の大きな違いだ。CJ3Aに搭載された旧式の「ゴーデビル」L4型2199ccガソリンエンジン*5を改良し、吸排気バルブ*6の位置をエンジン側面から上部へ移動、10馬力増強の70馬力となった「ハリケーン4」エンジンをCJ3Bに搭載した。

この前部の改良によって高さが増したエンジン*7を覆うために、ボンネットの厚みも増したという背景がある。ハリケーン4エンジンは国産のため、ジャパン・ハリケーン4が転じてJH4型と名付けられた。さらに、右ハンドル仕様に換装され「CJ3B-J3R」の型式となり民間向けとしても供給された。これが純国産ジープの原点である。以降さまざまに展開され、45年間の歴史を1998年までつくることとなった。

三菱・ジープの発展

斜め前方から見たツートーンカラーの三菱・ジープJ30

三菱・ジープの型式は初期が「J3」系、これが後に「J50」系と呼ばれた2030mmのホイールベース*8を持つショート*9モデル*10となり、民間向けの主流といってよい。また、防衛庁(現防衛省)の指示によりホイールベース2225mmの「J20」系が1973年に登場。これが陸上自衛隊の使用する73式小型トラックである。さらに全長を伸ばした「J40」系、「J30」系なども存在する。特にホイールベース2460mmで5ドアとなる「J30」系はワーゲンバスにも通ずるしゃれっ気と使い勝手の良さがあり、唯一無二の味がある。

ここでは民間向け主流の「J50」系でご紹介していく。J50系は国内向け車体の年代別の型式が以下のように変遷している。

J3 → J52 → J54 → J56 → J58 → J57 → J59 → J53 → J55

間違いなく正しい順序で並んでいる。ただし、隠れた輸出向け型式があったり、J59以降は数字を使い果たし、数字がJ59からJ53に若くなったりしている。半ば規則性を失い、分かりにくくなってしまっているのだ。

途中J50系はJ20系との共用化で1978年にフレーム*11の後端が広げられ、若干大きくなっている。これ以前のものを「ナロー*12ボディー*13」、以降が「ワイド*14ボディ」と称される。

個人的には当時の三菱・ギャランと同じ1995ccの4G52型ガソリンエンジンを搭載した前期型のJ58が好みである。乗用車から流用のエンジンに加えて、前期型はナローボディーのため、歴代ジープの中で最も軽量かつ軽快な車種であろう。4ナンバーとなるため、経済的にも負担が軽減できる。

通常歴代最強の三菱・ジープと呼ばれているのはJ57で、三菱・デボネアにも搭載された2555ccガソリンエンジンは120馬力を発生する。J57は1980年~1985年までの生産車種のためワイドボディーであり、1998年の最終型であるJ55まで基本的に車体は同じである。2000cc以上のガソリン車なので、登録は1ナンバーである。

最も経済性に優れ、販売台数を伸ばしたのは1978年~1985年まで生産されたJ54であろう。2659ccの4DR5型自然吸気ディーゼル*15を搭載する。軽快な走りこそは望めないが、4ナンバーであることと、ディーゼルによる経済性が売りである。

三菱・ジープJ53

三菱・ジープJ53のカラーバリエーション

三菱の四駆*16といえば三菱・パジェロが代表格だ。その初代パジェロは1982年5月に登場した。それに前後して、20系や40系の三菱・ジープは生産中止となり、50系だけが生き延びていくこととなった。

初代パジェロはその前衛的なデザインから大人気となり、当時の「RV*17ブーム*18」を巻き起こした。そんなパジェロだが、さらに10年さかのぼった1973年には三菱・ジープをバギー*19風に改造したコンセプトカー*20、「ジープパジェロ」が東京モーターショー*21にお目見えしている。パジェロ登場を機に、時代背景にも後押しされて、一気に世代交代が進んだ。

一方、生き残った50系三菱・ジープであるが、1985年にはガソリンジープのJ59、J57が姿を消し、ディーゼルに一本化される。その代わり、自然吸気ディーゼルを搭載したJ54は4DR6型ディーゼルターボ*22へと格上げ、これがJ57を超えると好評を博したJ53であった。

J53は前述したガソリンエンジンのJ58、J59、J57といった軽快な三菱・ジープ群とは一線を画す性質を持っていた。ディーゼルエンジン自体が重いこともあり、J58の1125kgに対して、J53では1360kgにもなっていた。しかし、いかにもディーゼルといった湿り気のある音を「がらんがらん」と響かせながら、エンスト*23させるのもままならないほどのトルク*24感が最大の武器となった。

床から生えた3本のレバーを駆使しながら、はうように不整地を乗り切るのがが、J53の真骨頂である。はなからドアのない車体から身を乗り出せば、むき出しの前後輪の位置を完全に目視できる。

三菱・ジープはトランスミッション*25を抱えるクロスメンバーが車体下に大きくせり出しているのが、やや弱点ではあるが、これをうまく避けるようなライン取りでパワステ*26なしの大きなハンドル*27を操作する。

現代のスポーツタイプ多目的車(SUV)に見られるようなトラクションコントロール*28、ブレーキ*29アシスト*30はおろか、エアコン*31を含め、運転手を補佐してくれる装置を一切合切なくしたのが三菱・ジープである。そのため、車内は水洗いすら可能だ。

若干寸法などの変化はあったものの、1953年からほとんど変わりのない運転席からの視界の中、「車との対話」を思う存分楽しめるのが三菱・ジープであり、J53であった。

まとめ

三菱・ジープJ53のカラーバリエーション

三菱・ジープはJ53が1986年~1994年まで生産された後、同年J55に引き継がれて1998年まで続いた。ちなみに、自衛隊仕様の「73式トラック」も1996年以降、順次2代目パジェロを原型とする新型73式トラック(現1/2tトラック)に置き換わっていった。

三菱・ジープは最盛期の1978年、1979年には年間1万台以上生産されていた。しかし、1982年のパジェロ登場以降は大方年間1500台前後となり、1996年が618台、1997年が572台になった。そして、1998年には431台となり、ついにJ55も生産終了となった。

同じくMB・GPWを始祖とする本家アメリカン・ジープはどうなったかといえば、Wrangler (ラングラー)やGrand Cherokee(グランドチェロキー)として今も息づいている。しかし、ラングラーはまだジープらしさを辛うじて残すものの、かなり乗用車化されてしまった感は否めない。

同じMB・GPWの血を受け継ぎながら、日米ではその進化の仕方も大きく異なった。特に亜種である三菱・ジープの方が、本家よりはるかに原型のジープらしさを残すことになったのは皮肉にも聞こえる面白い事実だ。

「三菱・ジープ」の言葉を耳にすると、どうもカレーライス*32を連想してしまう。カレーライスはインド*33から始まり英国で生まれながらも、完全に日本へ土着した食べ物である。

さっと出てくるハンバーガーが本家ラングラーだとすれば、小麦粉とカレー粉で作る「ライスカレー」は三菱・ジープそのものだ。

(出典:三菱自動車工業

*1:〔general purpose car の略 GP の転とも,漫画「ポパイ」に登場する架空の小獣の鳴き声からともいう〕四輪駆動の小型自動車。アメリカで軍用に開発された。馬力が強く荒れ地の走行に適する。商標名。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【truck】貨物運搬用の自動車。貨物自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【General Headquarters】連合国軍最高司令官総司令部。1945 年(昭和 20)アメリカ政府が設置した対日占領政策の実施機関。52 年講和条約発効とともに廃止。

*4:【bonnet】自動車の前部の,エンジンを収容する部分のカバー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【gasoline engine】ガソリンを燃料とする内燃機関。ガソリンと空気との混合気をシリンダーに吸入して圧縮し,点火爆発させた力でピストンを動かし,動力を発生させる。ガソリン機関。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6: 【valve】弁。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7: 【engine】種々のエネルギーを機械的力または運動に変換する機械または装置。機関。発動機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【wheelbase】車軸間の距離。特に,自動車の前輪の軸と後輪の軸との間の距離。軸距。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【short】短いこと。多く他の外来語に付いて短いという意を表す。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【model】自動車や機械などの型式(かたしき)。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【frame】自転車・自動車などの車体枠。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【narrow】幅の狭いさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【body】〔「ボデー」とも〕自動車の車体,航空機の機体,船舶の船体など,本体部分の称。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【wide】幅の広いこと。大型であること。また,そのさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【Rudolf Diesel】1858~1913ドイツの機械技術者。内燃機関の研究・改良に従事し,ディーゼル-エンジンを発明。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:自動車で,前後の四つの車輪すべてに駆動力を伝える方式。4WD 。全輪駆動。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:【recreational vehicle】野外のレクリエーションを目的とした車両の総称。レクリエーショナル-ビークル。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:【boom】爆発的に流行すること。急激に盛んになること。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*19:【buggy】〔サンド-バギーの略〕砂地を走行するためのレジャー用自動車。タイヤが太い。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*20:【concept car】デモンストレーション用に製作される,量産や市販を前提としない自動車。自動車メーカーの技術的・デザイン的な方向性を体現したもの。モーター-ショーなどで参考出品される。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【motor show】メーカー各社の新型自動車などを集めて催す展示会。自動車ショー。オート-ショー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:【turbo】排ガスを利用してタービンを回し,混合気を強制的にシリンダー内に送り込んで圧力を高める,エンジンの補助装置。出力・トルクを高め,併せて燃費向上に役立つ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:〔エンジン-ストップの略〕自動車などの,エンジンが不意に止まってしまうこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*24:【torque】回転軸のまわりの,力のモーメント。棒をよじる力や原動機の回転による駆動力を示すのに用いる。ねじりモーメント。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*25:【transmission】自動車などの歯車式変速装置。トランスミッション。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*26:自動車で,エンジンで駆動されるオイル-ポンプの油圧や電動モーターを利用してハンドル操作にかかる力を軽減する装置。ハンドル操作が軽くなる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*27:【handle】機械や器具を操作・運転する際,手で握って扱う部分。特に,自動車や自転車のかじ取りのためのもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*28:【traction control】駆動力制御装置。すべりやすい路面などで発進したり加速するとき,過度な駆動力で車輪が空転するのを抑えるため,エンジン出力を絞ったり車輪にブレーキをかけたりする自動制御装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*29:【brake】機械の運動を停止または減速させる装置の総称。制動機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*30:【assist】人の仕事を手伝うこと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*31:エア-コンディショナー(空調設備)・エア-コンディショニング(空調)の略。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*32:〔curry and rice; curried rice〕本来,インド料理の一。肉・野菜をいためたものにカレー粉と小麦粉を混ぜて煮た汁を飯にかけたもの。ライス-カレー。カレー。〔ライス-カレーが古い語形という〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*33:〔India から。「印度」とも書かれる〕アジア南部の連邦共和国。インド半島の大半を占める。二八州と中央政府の七直轄地から成る。住民の多くはヒンズー教徒。カーストが残存している。バラモン教・仏教・ヒンズー教の発祥地。インダス文明が栄えたのちアーリア人が侵入。紀元前四世紀のマウリヤ朝による統一以後も統一と分裂を繰り返し,イスラムも侵入。一六世紀末にムガル帝国が成立するが,1600年イギリスが東インド会社を設立し植民地化を進め1858年直轄領とした。1947年イスラム教徒の多いパキスタンとは別個に独立。連邦公用語はヒンディー語と英語。首都デリー。面積328万7263平方キロメートル。人口12億1000万(2011)。正称,インド。対内的にはバーラトを国名として用いる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)