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2代目デリカはキャブオーバー型ワンボックスの最高傑作!

森林の悪路を走る黒色の三菱・デリカ

特に日本人が好む車種が「ミニバン」である。軽自動車から普通自動車まで豊富な種類が出そろっている。これらミニバンの元祖は「キャブオーバー型ワンボックス」である。その最高作と評価される2代目三菱・デリカスターワゴンをご紹介したい。

2018年3月29日:用字用語の整理。

2代目デリカスターワゴン登場までの経緯

斜め前方から見た青色の初代三菱・デリカ

2代目デリカスターワゴンは1986年から1999年までの13年間にわたり、生産・販売された車種である。1994年からは後継車種にあたるデリカスペースギアの販売が開始されており、こちらは2007年まで継続された。そして同年に登場したのが、現行車種であるデリカD:5となっている。

デリカは1968年に600キロ積みのトラックとして初登場し、後にワンボックス型が加わった。これを現代の感覚で捉えると、いかにも古臭いトラックの様相で、当時の三菱・キャンターの弟分的な雰囲気が漂う。

1979年に全面改良された2代目デリカで乗用車系が登場した。これが初代「スターワゴン」の誕生である。そして、デリカの印象を確固たるものにしたのが、1982年に追加された4WD*1だ。これは同社のボンネット*2型トラック「フォルテ」のシャシー*3の上にデリカの車体を載せたもので、当時としては異様とも個性的とも形容される力強い外観を備えていた。ちなみに、フォルテのシャシーは初代パジェロにも使用されており、初代デリカスターワゴン4WDはパジェロとほぼ同等の性能を有していたとも換言できる。

1982年は初代パジェロが登場した年でもあり、これをきっかけとして空前の「RV*4ブーム*5」が到来した。デリカスターワゴン4WDはパジェロ、いすゞ・ビッグホーンなどの本格スポーツタイプ多目的車(SUV)と不整地走破性において比肩できる唯一のワンボックスカーであった。片や他社のワンボックスで名高かったのはトヨタのハイエース、タウンエース、ライトエース。日産のキャラバン、ホーミーなどがあった。

1986年にデリカスターワゴンが2代目へと移行する。デリカには2WD仕様もあったが、やはり4WDが圧倒的に人気だった。このように2代目デリカスターワゴンは4WD有りきで登場した車種であった。

2代目デリカスターワゴンの仕様

斜め側方から見た肌色の初代三菱・デリカ

2代目デリカスターワゴンの登場は1986年だったと先にご紹介したが、当時3ナンバー車というのは「ぜいたく品」に分類され、税金も2倍以上に跳ね上がった。そのため、売れ筋を目指すパジェロなどのRVやタウンエースなどのワンボックスは、全て5ナンバー枠であることが前提であった。

2代目デリカスターワゴンも例外ではなく、車体寸法は5ナンバー枠に収まり、エンジンは2Lガソリンエンジン*6と2・5Lディーゼル*7ターボ*8が用意された。現代において当時の各社ワンボックスは総じて出力不足であることを否定できない。

2Lガソリンにターボを装着すれば、動力性能を向上させるには最も有効だ。しかし、多人数を乗せるワンボックスは燃費を著しく悪化させてはいけない。そこで、出力こそは低いが、燃料価格が安いディーゼルエンジン*9にターボを装着し、「短所を殺し、長所を生かす」手法が主流となっていた。

ちなみに、5ナンバー・3ナンバーの規格が改定され、車体寸法が3ナンバーでも税金は5ナンバーのままとなったのは、1989年のことである。これにより2代目デリカスターワゴンにも、ハイルーフ*10仕様が追加され、2メートルを超える全高となるものも登場してきた。

冒頭で述べた「キャブオーバー型」とは運転席の下にエンジンが鎮座する車体形式のことである。一般的にトラックがこれに該当する。最近では2トン前後のトラックを改造したキャンピングカー*11も増えているため、運転感覚を体験された方も少なくないだろう。

2代目デリカスターワゴンは運転席の下にエンジンが縦置きされ、その出力は一直線上にトランスミッション*12、副変速機(トランスファー)、プロペラシャフト*13と介されて後輪に伝わる。その副変速機から前輪にも駆動力をお裾分けして4WDとなる構成だ。

他車のワンボックス4WDもそうであったが、2代目デリカスターワゴン4WDはパートタイム式4WDに、副変速機も備える。これが不整地での走破性向上の鍵を握るのだ。通常のシフトレバー*14の脇にもう1本短いレバーがあり、これで後2輪駆動、4輪駆動Hi、4輪駆動Loを選択できる。センターデフは備えていないため、4輪駆動Hi、4輪駆動Loともに、低μ路での使用が前提だ。

当時オプション*15などで「オートフリーホイールハブ」を各社採用していた。これは燃費向上を主眼としたもので、後2輪駆動時に副変速機から前輪ハブ*16までの駆動系に車輪側から伝わる動力を切り離す役割をする。

スズキ・ジムニーなどでは手動式が標準装備されており、手動式は一旦車外へ出て、前輪ハブのダイヤルを回して操作する。この手間を省くのが「オートフリーホイールハブ」だが、不整地や雪道に落ち込んで前進・後退を瞬時に繰り返すような状況だと難儀する。なぜなら、勝手にフリー・ロックの作動をしてしまうので、甚だ使いにくいからだ。フリーホイールハブの効果はそもそも微弱であり、構造も複雑化してしまうので、無い方が無難な装備だ。

2代目デリカスターワゴンの走行性能

斜め側方から見た青色と白色のツートーンカラーの2代目三菱・デリカ

まずは舗装路である。先述したように、2・5Lディーゼルターボでも出力が充足されているとは言い難い。数値的にも軽自動車のターボ64PS*17に毛が生えた程度の85PS / 4200rpm*18である。ただし、ディーゼルの特性であるトルク*19は太く、20・0kgm / 2000rpmである。比較として、2012年にデリカD:5に追加設定されたインタークーラー*20付きターボのクリーンディーゼル*21は2・3Lながら148PS / 3500rpm、36・7kgm / 1500~2750rpmで、隔世の感を禁じ得ない。

2代目デリカスターワゴン4WDは当時としてはトルクが太く、それを生かした走りを得意とする。トランスミッション*22は5MT*23と4AT*24があるが、限りあるエンジン性能を引き出すために、ぜひ5MTをお勧めしたい。

発進時は、このトルクのおかげでアクセル*25を全くあおらないでクラッチ*26につないでも、すんなりと前に出る。ターボ加給は体感できるものの、出力特性は至って滑らかであり、扱いやすさが非常に優れている。

ただし、カーブ*27での速度の出し過ぎは禁物である。なぜなら、標準装着の柔らかな215 / R15タイヤはカーブで速度超過すると即刻タイヤがスキール音を上げて限界を知らせてくる感じだ。キャブオーバー型に加え、デリカ特有の運転席の高さも手伝い、至って見通しもいい。また、無理をさせなければ、ハンドル操作にも素直に反応してくれる。

そして、不整地での性能であるが、これも最低地上高の高さで他社のワンボックス4WDより確実に抜きん出た走行性能を持っているといえるだろう。総じて他社ワンボックスや現代のクロスオーバー*28よりも上を行き、ジムニーやトヨタ・ランドクルーザーなどの本格的SUVよりは劣るという立ち位置だ。

短いホイールベース*29と最低地上高の余裕により、乗用車では到底不可能な悪路を走破することができる。4輪駆動Loを使用すれば、悪路の急登坂でも悲鳴を上げない。ただし、怖いのは来た道を下るときである。キャブオーバー故に、頭から真っすぐ転落してしまいそうな恐怖感は筆舌に尽くし難いほどだ。

さらに掘り下げると、2代目デリカスターワゴン4WDの不整地での性能は初代より劣ってしまう。なぜなら、初代はパジェロ譲りのシャシーを使用しているが、2代目はモノコックボディー*30であるからだ。タイヤは初代の14インチ*31から15インチに大型化され、車体の剛性も十分にある。しかし、肝心のトランスミッションをはじめとした「臓物」が車体下にむき出しでぶら下がっている。そのため、特に岩場などで下回りを強く当ててしまうような状況には不向きである。

まとめ

2代目三菱・デリカの運転席

2代目デリカスターワゴン4WDは13年間の歴史の中で、外観も目まぐるしく変貌を遂げてきた。その中でも、4灯ヘッドライトとグリル*32ガード*33を装着した初期モデルのデザイン*34が最も優れていると感じる。

その後、鉄パイプ*35そのものであるグリルガードが車両正面に付いているのは歩行者などに対して危険との意見が多数となり、これが消滅した。そして、衝突安全基準が強化されキャブオーバー型自体が使用不可能となり、デリカスペースギアへとその座を譲ることとなった。

デリカスペースギア4WDはフル*36フラット*37フロア*38を実現したが、その悪影響で明らかに重心が高く、旋回時などには不安を感じられた。それに比べて、3ナンバーかつ車幅も広がった現行のデリカD:5はデザインも落ち着いてまとまっている。初出から10年を超えた今もなお売れ続けているのが理解できる。

日産の傘下になるなど揺れる三菱自動車だが、2017年10月に行なわれた三菱自動車の中期経営計画発表会にて、2019年に新型デリカが投入されることが明らかになった。

日本各地の消防署からも指揮車や資機材輸送車として採用されてきたのはだてじゃない。

唯一無二の独自路線をしっかり引き継いで、「かしわ有りでも」見事に返り咲いてもらいたい。

(出典:三菱自動車工業株式会社

*1:(4 wheel drive)前後4輪すべてに駆動力を配分する構造。また、その機構を持つ自動車。高速走行・悪路走行に適する。四駆(よんく)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【bonnet】自動車の前部の機関部のおおい。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【chassis】〔シャーシ・シャーシーとも〕自動車・電車などの車台。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:(recreational vehicle)野外のレジャー・レクリエーションに使う多目的用途車。キャンピング‐カー、オフロードを走るための四輪駆動車、ワンボックス‐カーなど。RV車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【boom(アメリカ)】ある物事がにわかに盛んになること。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【gasoline engine】ガソリンを燃料とする内燃機関。ガソリンと空気との混合気をシリンダーに吸入して圧縮し,点火爆発させた力でピストンを動かし,動力を発生させる。ガソリン機関。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【diesel】ディーゼル機関を原動機とする客貨車。→内燃動車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【turbo】過給器の一種。排ガスのエネルギーを利用する過給器。排気タービン過給器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【diesel engine】内燃機関の一。1893年,ディーゼルがその理論的考察を発表。シリンダー内の高圧高温に圧縮された空気中に,燃料として重油または軽油を噴射して爆発させるもの。点火栓を用いないので構造が簡単で故障が少なく,熱効率がよい。また,安価な燃料を使用できる。大型機関に適し,船舶・鉄道車両・大型自動車・工業機械などに広く使われている。ディーゼル機関。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【high roof】通常の同型車よりも屋根を高くした自動車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:(和製語 camping car)キャンプ用に寝起きや炊事などの設備を備えた自動車。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【transmission】自動車などの変速装置のギア。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【propeller shaft】エンジンの動力を伝える回転軸。後輪駆動の自動車では、通常、車体前部にある変速機と車体後部にある差動歯車とをつなぐ。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【shift lever】変速装置を操作する取っ手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:【option】機械製品などの購入時に、追加で注文する付属品やサービス。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【hub】車輪などの中心部の、軸とスポークの間の部材。→こしき(轂)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:(Pferdestärke(ドイツ))馬力。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【revolutions per minute】エンジンやタービンなどの毎分回転数。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*19:【torque】原動機の回転力。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*20:【intercooler】中間冷却器。流体を加熱する過程で冷却する装置。特に,気体の連続圧縮過程の冷却装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【clean diesel】NOx や粒子状汚染物質を排ガスとしてほとんど出さないディーゼル-エンジン車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:【transmission】(自動車などの)歯車式変速装置。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*23:【manual transmission】自動車の手動変速機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*24:(automatic transmission)自動変速装置。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*25:(アクセレレーター(accelerator)の略)自動車の、足でふむ加速装置。これをふむと気化器の絞り弁が開き、機関の回転数や出力が増す。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*26:【clutch】一直線上にある二つの軸の一方から他方へ動力を任意に断続して伝える装置。咬合(かみあい)式・円板式・円錐(えんすい)式などがある。連軸器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*27:【curve】曲がること。また、曲がったところ。湾曲。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*28:【crossover】在来の種々の要素を組み合わせて新たなものを作り出すこと。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*29:【wheelbase】自動車の前車輪と後車輪の中心間の距離。軸間距離。ホイール‐ベース。軸距(じくきょ)。

*30:【monocoque body】自動車などの,車体とフレームとが一体化した構造。フレームレス-ボディー。単体構造。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*31:【inch・吋】ヤード‐ポンド法の長さの単位。1フィートの12分の1。2.54センチメートル。記号 in/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*32:【grille】自動車の前部につけた格子。フロント‐グリル。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*33:【guard】守ること。保護すること。防護。また,それをする人や物。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*34:【design】意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*35:【pipe】空気・ガス・液体などを通し,他に導くための管。鉄管・鉛管・土管・ゴム管・ビニール管などがある。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*36:【full】いっぱいであるさま。全部。十分。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*37:【flat】平らなさま。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*38:【floor】床(ゆか)。階。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)