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高校球児の熱情を守れ!甲子園へ続く果てしなき道

試合に勝利した高校の校歌演奏と校旗掲揚

今年も夏の甲子園において、熱戦が展開された。そこで気になる一つの傾向が顕著になっている。それは私立高校の高い出場率だ。甲子園を目指すには、有能な選手が集まりやすい私学への進学が近道になっている。果たして夢を追う球児の「思い」はいかに。

2017年10月24日:用字用語の整理。

甲子園出場校に見る、私学の隆盛

ここ数年、私立高校の甲子園出場が目立っているのは、高校野球ファンならずとも周知のところである。実際に「2017年の夏の甲子園」49代表校のうちで、41校が私立であり、83%にも上る。

この傾向は2000年に私立高校の出場校が70%を超えたころから際立ち、一時60%台に下降してから増加傾向となり、今年の83%にまでに至っている。

私立高校の隆盛には、「部活動である野球部」を積極的に売り出し、入学生を集めたい思惑が見え隠れする。とりわけ高校野球は、プロ野球に比肩するほどの人気っぷりである。甲子園に出場すれば、マスメディア*1がこぞって紹介するため、その宣伝がもたらす「効き目」は絶大である。

そして、その宣伝効果により、有能な選手が同校を志望する動機に直結する。また、学校の見掛けを洗練して,与える印象を良化できる。すなわち、少子化のあおりをまともに受ける学校経営においても、欠員を回避することができ、売り込みの絶好の機会となるわけだ。

さらに、寮や完備された練習設備もあれば、環境面でも公立高校との差は歴然となり、ことさらに私立高校が優勢になる。甲子園を目指す生徒からすれば、その情熱が燃えれば燃えるほど、「私立高校で野球をしたい」気持ちに傾倒するのは無理もないだろう。

公立高校を応援する周囲の目

公立高校が「人と金」で絶対的に不利な中、他の都道府県から腕利きの選手を集めている私立高校に対して、周囲の目は厳しいと言わざるを得ない。それこそ東北地方の高校にも関わらず選手間で関西弁が飛び交ったり、有力な中学シニア*2チームの選手たちが、こぞって地方の高校に進学したりしていることも珍しくないのだ。

地元の出場校を応援したい気持ちがあっても、ベンチ入りの顔触れに県内出身者が辛うじて数人、もしくは皆無だとどうだろうか。なかなか声援に身が入らないのも理解できるはずだ。今年の甲子園でも、公立の彦根東高校が私立の青森山田高校を追い上げた場面で、大勢の観衆が手拍子や声援を送り、球場全体が異様な雰囲気に包まれたのは象徴的だった。

甲子園に出場したい球児の純真

甲子園出場が子どものころからの念願であり、越境入学をして有力な私立高校に進む生徒たちに、制度上の問題は全くない。親元を離れ、不慣れな地方の高校で甲子園を夢見ることに、決死の覚悟で挑戦する生徒もいる。

周囲の想像をはるかに超える「親の期待」「レギュラーメンバー*3になれない不安」「けがの怖さ」などの重圧に押し潰されそうになるはずだ。加えて、血へどを吐くような苦しい練習の日々を乗り越えて、レギュラーをつかみ取ったはずなのだ。ひたすら甲子園を目指す選手たちに、県外出身者を快く思わない観客が、心ない罵声を浴びせることもあるのだ。実に嘆かわしい限りで、思わず拳を握り締めてしまうほどの憤りを覚える。

問題視すべき事柄はそこではないのだ。私立高校有利になってしまう「現状の制度」なのである。しかも、私立高校の出場校が8割を超えてしまっているため、将来的には公立高校の出場がなくなることも現実みを帯びてきているのだ。だから、喫緊の課題であることが認知されなくてはならないのだ。

県外出身者が多い出場校に違和感を覚えて、毒づいたり、敵意をむき出しにしたりするのは賢明ではない。観客もマスメディアも、高校野球の制度や在り方についてこそ、一石を投じるべきなのだ。少なくとも一部の大人たちの価値観によって、選手たちの夢を壊すことはあってはならないし、批判の対象が間違っていることに気付かなければならない。

まとめ

今や、高校野球の「一球入魂」のプレーに感動し、皆から愛されるスポーツになっている。ただ、多方面において影響力が過大になったため、本来の「あるべき姿」を見失ってしまったのではないだろうか。

選手たちが至純の心で白球を追い掛ける姿は、誠に美しく尊い。だから、一生懸命に野球を競技している選手たちが、出身地の違いから時に非難されてしまうような現状は残念でならないのだ。

今こそ原点に立ち返り、高校野球の「根本」に着目すべきであり、罪のない選手たちを傷付けない議論がなされることを切望してやまない。

歯を食いしばり甲子園で激戦する彼らに、幾度となく気持ちを鼓舞されてきた。そんな彼らが持ち帰るのは「土」だけではない。誇りとして心に刻まれた「かけがえのない夢」があるからだ。

*1:【mass media】マス-コミュニケーションの媒体となるもの。新聞・雑誌・ラジオ・テレビなど。マス-コミ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【senior】年長者。上級生。シニヤ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【regular】〔レギュラー-メンバーの略〕常に出場する選手。正選手。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)