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世界一長いバンコクの正式名称!タイ人も覚えられない?

タイの列車から手を振る男性

タイの首都「バンコク」には、延々と続くフルネームが存在する。そして、タイ人はバンコクのことを「クルンテープ」と呼んでいる。では、なぜそこまで長いのか。なぜバンコクとは言わないのか。そんな素朴な疑問を調査してみた。

2017年9月20日:用字用語の整理。

タイ人ですら言い切るのが難しい「正式なバンコク」

“とても長いねはん像"

熱狂的なタイファンや親族にタイ人がおられる方なら「クルンテープ」はご存じかもしれない。なぜなら、日常会話やテレビ・ラジオ番組からも耳にする機会は多いからだ。しかし、クルンテープに続く「全て」となると話は別だ。とにもかくにも都市の正式名称としては、世界最長なのだから無理もない。

百聞は一見にしかずで実際にご覧いただこう。日本人にとって、なじみの少ないタイ語だが、一行には収まりきらない「全長」から何となくつかめるはずだ。

กรุงเทพพระมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุทธยา มหาดิลกภพ นพรัตน์ราชธานี บุรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์ มหาสถาน อมรพิมาน อวตารสถิตย์ สักทัตติยวิศนุกรรมประสิทธิ์

(引用:在東京タイ王国大使館

厳密に言うとタイ語の音声を日本語で表記することはできない。また、タイ語には日本語にない声調*1の概念がある。すなわち、このまま音読してもタイ人に伝わらない。しかし、長蛇のような「本物のバンコク」にアメージング*2のはずだ。

クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット

(引用:タイ国政府観光庁

タイ語はシナ・チベット語族に属するが、バンコクの正式名称に関しては、仏教にゆかりのあるサンスクリット*3の影響が、色濃く残っている。

イン神(インドラ、帝釈天)がウィッサヌカム神(ヴィシュヴァカルマン神)に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都、最高・偉大な地、イン神の戦争のない平和な、イン神の不滅の宝石のような、偉大な天使の都。

(引用:ウィキペディア

バンコクの正式名称を一言一句言い損ねないタイ人に出会ったことがない。タイ人の大多数が、この世界一長い首都名の初っぱなにある「クルンテープ」しか言わないのが慣習となっている。書き言葉においては「クルンテープ」の直後に省略記号を用いるのが一般的だ。いかにも面倒臭いのを好まないタイ人らしい。

ただし、公式的なテレビ・ラジオのニュースなどでは、クルンテープ・マハーナコーンまで言っていることが多い。日本語と同様で、慣例になっている省略を避けることで丁寧さを醸出しているのだろう。また、バンコクのナンバープレート*4も「クルンテープ・マハーナコーン」まで表記されている。

正式名称の起源とは?

“夜のエメラルド寺院"

チャクリー王朝の初代国王のラーマ1世が遷都の際に詠まれた歌を、そのまま正式名称として採用し、このような長い首都の名称になったそうだ。ラーマ4世のときに、これまでの解釈は引き継ぎ、一部「イン神の卓越した宝石」の部分を「イン神の不滅の宝石」に変更し、現在に至っている。

短縮することが議論になったかどうかはつゆ知らずだ。しかし、タイ人の国王に対する尊崇の念が、この長い首都名を守り続けているとするならば、彼らにとって誇り深き「クルンテープ」であるはずだ。

タイ人が「バンコク」と言わない理由とは?

“チャオプラヤー川を渡る小舟"

タイ人が「バンコク」というのを聞いたことがない。もちろん、旅行者が理解できないことへの気遣いで使われることはある。しかし、十中八九のタイ人が「クルンテープ」の称呼を選択する理由はなんだろうか。

タイから見た外国人には、普通に用いられている「バンコク」だが、下記のようになまりが変遷し、現状のバンコクに落ち着いたようだ。

「バーンマコーク (บางมะกอก)」が訛った「バーンコーク (บางกอก) 」がさらに訛ったものである。

(引用:ウィキペディア

また、注意すべきは前述した「バーンコーク」は、バンコク都の河岸にあるトンブリー区を指す。そのため、タイ人同志では「首都を意味しない」ようだ。しかし、過去に欧米人の誤用である「首都バンコク」が世界中に浸潤し、やがて定着してしまったのだ。もちろん、タイ人は「正しいクルンテープ」を選んで当然である。

正式名称の中には聞き覚えのある地名が?

“ウボンラーチャーターニーの寺"

「ラーチャターニー」は、ウボン・ラーチャターニーのラーチャターニー県と同じ発音のものだ。ラーチャは王様で、ターニーは都を意味する。

「ブリー」もタイの地名ではしょっちゅう聞く言葉だと思う。例えば、ペーチャブリー県、チョンブリー県などに使われているブリーは街や市を表す言葉だ。

その他にも覚えのあるタイ語が、この長い正式名称の中には随所に登場する。

まとめ

バンコクの正式名称の「長さ」には驚かされた。もし、すらすらと言い終わることができたなら、タイ人から尊敬のまなざしが注がれることは間違いない。暗記にもってこいの「クルンテープ」という歌の動画を共有しておくので、必要があればぜひとも挑戦されたい。

悠久の時を経ても、堅持してきたタイ人に対して尊敬の念が湧いた。それは合理化の名の下に、伝統文化がいともたやすく見限られてしまう昨今だから、なおさらのことかもしれない。

一方では全てを水に流すほど寛容で、一方では確固たる信念で厳格に臨む。こんなところも、タイ王国がわれわれを魅了して止まない一つの理由かもしれない。

(出典:YouTube

*1:音節の構成要素である高低昇降のアクセント。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【amazing】驚くべきさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【Sanskrit】〔完成された語の意〕インド-ヨーロッパ語族のインド語派に属する古代語。紀元前四世紀にパーニニの文典によって完成され,長く文章語・公用語として文法的に固定化されたまま文学・宗教・学術・法令などに用いられた。広義では,その古形であるベーダ語も含めていう。梵語(ぼんご)。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【numberplate】自動車などの登録番号標。ライセンス-プレート。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)