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軽快なFIAT 500S Plus!FIAT 500のマニュアル車の楽しみ方

斜め前方から見たグレイ・ポンペイ色のFIAT 500S Plus

FIAT 500 ツインエア POPにマニュアル・トランスミッション搭載モデルが投入された。現在は正規の日本向けFIAT 500は全てオートマチック車なので、今回は、限定車ではあるが、このありがたい存在のMTモデルFIAT 500S Plus(プラス)についてご紹介する。

2017年9月20日:用字用語の整理。

FIAT 500S Plusについての礎

Plus専用デザインアロイホイール

FIAT 500のマニュアル車のグレード名は、「FIAT 500S」と名付けられている。2013年4月以降に投入されたモデルだが、直近では2016年12月に「FIAT 500S」が限定150台の形で販売された。そして、2017年7月8日より「FIAT 500S Plus(チンクエチェントエス プラス)」が100台限定で発売される。グレイ・ポンペイ*1、アルビ*2・グリーン、ブルー・イタリーの3色から選べる。

「S」が何を指しているかご存じだろうか。FIATジャパンの公式サイトには、「スポーティ、セクシー、スタイリッシュ」と銘打たれていた。なるほど、その外観は専用バンパー*3、スポイラー*4、アルミホイール*5などが取り付けられ、通常版FIAT 500より男らしさが前面に押し出されているように映る。

話に水を差すようだが、FIAT 500にはあのファンを魅了する飾り気のないデザインを貫徹して欲しいものだ。なので、ここでは外観についてはさておき、その中身について掘り下げてみたい。

諸元表からFIAT 500S Plusの性格を読む

スポーツレザーステアリング

  FIAT 500S Plus FIAT 500 ツインエア POP
全長 × 全幅 × 全高 3,610 × 1,625 × 1,515mm 3,570 × 1,625 × 1,515mm
ホイールベース 2,300mm
トレッド前後 前輪:1,415 後輪:1,410mm
車両重量 1,010kg
エンジン 875cc直列2気筒 8バルブ
インタークーラー付ターボ
ボア × ストローク 80.5 × 86.0mm
圧縮比 10.0:1
最高出力 63kw (85PS) / 5,500rpm
最大トルク 145Nm (14.8kgm) / 1,900rpm
トランスミッション 5速MT 5速ATデュアロジック
サスペンション前輪 スタビライザー付ストラット
サスペンション後輪 スタビライザー付トーションビーム
ブレーキ前後 前輪:ディスク 後輪:ドラム
タイヤサイズ 185 / 55R15 175 / 65R14
JC08モード燃費 26.6km/L 24.0km/L

上の表は、「諸元表」と呼ばれる。今回は走行性能に関係する、比較に必要な部分だけを選り抜いてみた。最近では諸元表を確認する人が少なくなった。そのせいで国産メーカーの公式サイトのカタログを見ていても、片隅に追いやられ、見付けるのすら一苦労するようになった。しかし、ここに並んだ数値から、その車の「性格」を読み取れるから、重要なのである。

まず、車体自体は全く同じであることが分かる。全長が少し長いのは、FIAT 500S Plusの専用バンパーのせいである。全高も一緒なので、サスペンション*6も同じでないかと推測されたが、調査してみるとやはりそのようである。

エンジンはFIAT 500S Plusに似付かわしい味のある0・9Lツインエアである。

ブレーキ形式も変更無し。

タイヤだけは上級グレードのFIAT 500 ツインエア ラウンジと同様で1インチ大きく扁平(へんぺい)率*7の低いものが履かされる。

そして、注目のトランスミッションギア*8である。実はこれもFIAT 500S Plus、FIAT 500 ツインエア POPともに基本的に同じものが搭載されている。FIAT 500Sはクラッチペダル*9を自ら踏み込む必要がある。それに対しFIAT 500 ツインエア POPのデュアロジックはクラッチペダルが無く、クラッチ操作はトランス・ミッション内で機械が代行してくれる。このような違いがあるのだ。

表では割愛したが、ミッションの各ギヤ比、その出力側にあるファイナルギヤ比も含めて、両者に違いはない。結果、FIAT 500S PlusとFIAT 500 ツインエア POPは、変速を自分で行なうか否かだけが「異なる点」であると導出できる。

FIAT 500S Plusの実際の走りはどうなのか?

3ペダルのFIAT 500S Plus

前項でFIAT 500S Plusの性格を割り出してきた。では、実際の走りはどうであろうか。

FIAT 500はイタリアの小型大衆車である。しかし、小型大衆車は得てしてそこに強力なエンジン、マニュアル・トランスミッション、強化されたサスペンション*10を組み込むことで、大変面白みのある乗り物へと変貌を遂げるものだ。これがよく言われる「ホット・ハッチバック」、通称「ホットハッチ」である。

このホットハッチの適例は国産車でも多くある。現在ではスズキ・スイフト スポーツやホンダ・フィット RSなどであろうが、これらはちょっぴり車体が大きい。国産の新車で購入できるホットハッチの筆頭は、スズキ・アルト ワークスではないだろうか。

FIAT 500の場合、そのホットハッチを具現化したのは1・4Lインタークーラー*11付きターボ*12を搭載するアバルトシリーズであろうが、FIAT 500S Plusも0・9L直列2気筒 8バルブ・インタークーラー付きターボという、十分に力感のある面白いエンジンを積んでいる。

この0・9Lの限られた排気量と最大出力を、運転する者の力量で最大限に引き出すことができるのがFIAT 500S Plusが魅力である。日常生活圏域の扱いやすさを重視した2気筒エンジン故、本格的な速さは求められない。しかし、単なる町中の移動やちょっとした山道での運転を純粋に楽しめることが、このマニュアル車が持つ「味」である。

FIAT 500S Plusの足回り*13は先述のように、特に強化されていない。だから、素早いハンドルさばきには少し物足りなさも覚えるだろう。2014年に発売された「FIAT 500S + BILSTEIN」のように、足回りが強化されていれば、一層FIAT 500S Plusは胸躍る乗り物に化けてくれるはずだ。

「乗り心地を犠牲にせずに強化した足回り」などの宣伝文句がよく入ってくるが、FIAT 500S Plusやホットハッチは、胃が揺さぶられるほどの硬い足回りを入れたほうが、よっぽど楽しいのである。

まとめ

アルビ・グリーン色とブルー・イタリー色のFIAT 500S Plus

いつの間にか日本では、AT車比率が98%にまで上昇し、「MT車はスポーツカー」のような錯覚を起こしてしまった。日本では米国と同様で、移動中はとにかく快適であることが重視されるようになり、応接間にハンドルを付けたような車が氾濫するようになった。

しかし、FIAT 500が誕生した欧州の現状は、いまだ80%以上がMT車であると言われている。これは欧州が貧乏だとか古風とかではなく、彼らは車は「操るもの」と捉えているようなのだ。

AT車も随分と優秀になったが、やはり自動変速は運転手が思っているタイミングとずれて変速されることが多い。FIAT 500のAT車に搭載のデュアロジックも自らで変速できるモードを備えているが、変速時に「微妙な間」が開いてしまう。そのため、小気味よく走らせたいとき、ストレスを感じることもあるだろう。それは車が運転手の意思に反して操ってくることによるものだ。

FIAT 500S Plusは、エンジンの力の出具合に限りがあることを意識しながら運転するのが正しいのだろう。自身の手で「ここぞ」という瞬間にシフトアップ、ブレーキを踏んだかかとでアクセルをちょいとあおりながら3速、2速もシフトダウン。そして、曲がった先ではエンジン回転数は即時に加速ができる態勢に入っている。そんな楽しみが日常の中でできるのである。

AT車が日本で急増した理由は、交通渋滞が多いことが挙げられる。MT車は確かにAT車よりは面倒くさい部分はあるだろう。しかし、その手間よりも楽しさの方が上回れば「愛らしいやつ」に早変わりするはずだ。

AI*14による自動運転がそう遠くない未来に実現されるかもしれない。しかし、旅と同じで「不便さ」が一緒に連れてくる「感動」のことは、決して忘れたくないものだ。

(出典:Fiat Chrysler Automobiles

*1:【Pompeii】イタリア南部,ナポリ湾岸にあるベスビオ火山南麓にあった古代都市。ローマ時代に栄えたが79年のベスビオ山噴火によって埋没。1748年に発見され発掘が進み,観光地として有名。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【Albi】フランス南部の古都。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【bumper】急激な機械的衝撃を緩和するための装置。ゴム・ばね・空気・油などの弾性を利用して,衝撃の運動エネルギーを吸収する。車両・銃砲など各種機械装置に組み込まれる。自動車のバンパーもこの一種。緩衝器。ダンパー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【spoiler】 航空機の主翼上面の可動板。揚力を減少し抗力を増加させる。 自動車に取り付けられ,車体に沿って流れる空気を調節し,車体が浮き上がるのを抑えるもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:〔和製語 aluminum+wheel〕アルミニウム合金製の車輪。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【suspension】自動車などで,車輪と車体をつなぎ,路面からの衝撃や振動が車室に伝わるのを防ぐ装置。懸架装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:天体の扁平の度合を示す数値。赤道半径と極半径との差を,赤道半径で割って表す。

*8:【transmission gear】自動車などの歯車式変速装置。トランスミッション。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【clutch pedal】自動車などのクラッチを操作するペダル。踏み込むとクラッチは切れる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【suspension】自動車などで,車輪と車体をつなぎ,路面からの衝撃や振動が車室に伝わるのを防ぐ装置。懸架装置。

*11:【intercooler】中間冷却器。流体を加熱する過程で冷却する装置。特に,気体の連続圧縮過程の冷却装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【turbo】排ガスを利用してタービンを回し,混合気を強制的にシリンダー内に送り込んで圧力を高める,エンジンの補助装置。出力・トルクを高め,併せて燃費向上に役立つ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:自動車などで,車輪とそれを取り付ける部分の全体。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:〔artificial intelligence〕学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューター-システム。応用として,自然言語の理解,機械翻訳,エキスパート-システムなどがある。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)