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カリフォルニア限定のFIAT 500e!その出来栄えを探る

斜め前方から見ただいだい色のFIAT 500e

2006年に現行のFIAT 500が販売を開始した。そして、2013年8月にはエンジンの代わりにバッテリーとモーターを搭載したEV仕様のFIAT 500も加わっている。この仕様は「FIAT 500e」と名付けられ、米国カリフォルニアとオレゴン限定で販売されている特異な存在だ。

2018年2月17日:用字用語の整理。

FIAT 500eとはどんな車か?

側面から見た充電中のFIAT 500e

日本国内向けに通常設定されているのは鉄の屋根を持つFIAT(フィアット)500(チンクエチェント)とキャンバストップ*1仕様のFIAT 500Cである。時折マニュアル車*2のFIAT 500Sなども限定販売されるが、「FIAT 500e」は日本で登場しておらず、出回っている情報量も非常に限定的だ。

まずFIAT 500eの外観を見ていくと、前部・後部のバンパー*3形状に目を引かれる。円状の穴がたくさん付けられたバンパーは単に通常のFIAT 500との差別化のためでなく、空力抵抗低減を狙ったものだ。これによって13%空力抵抗が軽減されているそうだ。

FIAT 500eの「e」はエレクトリック*4の意味である。この車両にはエンジン*5は搭載されておらず、ボンネット*6内にはモーター*7ユニット*8と1速トランスミッション*9が鎮座する。また、このモーターに電力を供給するためのリチウム*10イオン*11バッテリー*12が床下に搭載されている。

FIAT 500eに搭載されたモーターは83kW*13(111PS*14)の馬力と147lb・ft(ポンドフィート)のトルク*15を発生する。147lb・ftは換算すると199・3N・m(ニュートンメートル)(20・3kgm*16)ということになる。この数値は、FIAT 500のツインエアエンジンが持つ63kW(85PS)、145N・m(14・8kgm)よりも高い。

  FIAT 500e FIAT 500 ツインエア
馬力 83kW(111PS) 63kW(85PS)
トルク 199・3N・m(20・3kgm) 145N・m(14・8kgm)

FIAT 500eの変更点はこれだけではなく、足回りも専用の設定に置き換えられているそうだ。床下に置かれたバッテリーによりガソリン車*17よりも重心が低く、前後重量配分も64:36から57:43に向上している。

  FIAT 500 FIAT 500e
前後重量配分 64:36 57:43

この構成から推し量るに、実際の走行でもガソリン車と遜色ない。むしろそれ以上の操舵感を味わえる。なかなかの出来栄えであるようだ。最高速も気になるところだ。イタリア*18本国仕様のFIAT 500で、ツインエアは時速173キロ、1・2L車は時速160キロと公開されている。そして、FIAT 500eの最高速度は時速137キロとなっている。

  FIAT 500 ツインエア FIAT 500 1・2L FIAT 500e
最高速度 173km / h 160km / h 137km / h

ここまで見る限り、日本での実用化も問題ないのではという気がしてくるが、FIAT 500e誕生の背景を織り交ぜつつ、もう少し詳しく掘り下げてみたい。

カリフォルニアZEV規制対応のために誕生したFIAT 500e

斜め後方から見ただいだい色のFIAT 500e

FIAT 500eの優れた動力性能についてご紹介してきたが、実はこのFIAT 500eには航続距離の問題がある。公表では航続距離は84マイル(135km)となっており、心もとなさが残る。日産・リーフの初期モデルも同じような問題を抱えていたが、新型となったリーフの公表航続距離は400kmとなっているので、大きく水をあけられている。

実際に米国でFIAT 500eを購入する際は自宅に充電設備を置けるか、使用範囲は想定航続距離内に収まるかなどの事前審査もあるそうだ。FIAT 500eは240ボルト*19電源を用いて4時間の充電時間を要する。

カリフォルニア*20州には大気資源局が施行している「ZEV規制」なるものがある。ZEVは「Zero Emission Vehicle(無公害車)」の頭文字で、電気自動車と水素燃料車が該当する。

自動車使用頻度の高さと地形条件により、カリフォルニア州は大気汚染が深刻である。ZEV規制もその対策として施行されたもので、カリフォルニア州で販売を行なう自動車会社は販売数全体の14%以上がZEV該当車でなければ、罰金が科せられる仕組みとなっている。

ZEV規制は2018年からさらに厳格化する。これまでGM(ゼネラルモーターズ)、Ford(フォード)、トヨタ、日産など州内で6万台以上販売する自動車会社に限られていたものが、2万台以上に変更となる。新規適用となる自動車会社の中にはFIAT傘下のCHRYSLER(クライスラー)も含まれている。

米国においては、日本よりはるかに豊富な種類のFIAT 500が販売されている。カリフォルニア州に始まったZEV規制であるが、現在は他の11州もこれに準拠しており、この対策を怠れば米国市場での自動車販売が事実上不可能になってしまう。

FIAT 500eはこのZEV対策として投入されたことは間違いないだろう。航続距離面で未完成のFIAT 500eだが、販売比率14%を達成すべく奮闘している。

FIAT 500の全面改良が間近に迫っている?

フルリニューアルがうわされるFIAT 500のデザイン予測

今はFIAT 500に限らず、どんな車種でも環境対策は命題である。Fiat Chrysler Automobiles N.V.(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の代表者であるセルジオ・マルキオンネ氏が2017年3月に新型FIAT 500の話題に触れた。

それによると、FIAT 500やPanda(パンダ)といった小型車を完全電気自動車にすることは自殺行為であると述べている。これは技術面などで時期尚早であるという意味にも取れる。今後のFIAT 500は本国で現在設定されているクリーンディーゼル*21を廃止。それに代わって48ボルト仕様のハイブリッドカー*22設定する方向で調整されているようである。

新型FIAT 500の外観予測なども、ちらほらと海外で出始めている。2006年に登場した現行版であるから、そろそろ刷新されてもおかしくない時期である。画像の信ぴょう性のほどは分からないが、MINI(ミニ)などの例に漏れず、間延びし出した印象を受けてしまう。

環境性能が高められるのは大いに歓迎できる。ただし、MINIと呼べなくなったMINIの轍(てつ)を踏んでほしくない。どうかFIAT 500はこれまで築き上げた「独自の道」を進み続けてもらいたい。

まとめ

FIAT 500eのパワートレイン

今回ご紹介したFIAT 500eであるが、残念ながら現状において日本国内へ導入されてくることはないだろう。しかし、FIAT 500のツインエアエンジンを2気筒にしたのも、モーターを取り付ける余裕を設けることを前提としているはずだ。また、FIAT 500がハイブリッドカーに転換するうわさも今に始まったわけではない。

米国におけるFIAT 500eの価格に触れておきたい。3万2995ドル*23からとなっている。日本円に換算する約359万円(2018年1月31日現在)である。米国仕様のFIAT 500は1万4995ドルなので日本円だと約163万2000円(2018年1月31日現在)となる。日本仕様のは199万8000円からとなっている。やはり米国で限定発売されている電気自動車であるFIAT 500eは格段に高くなっている。

(2018年1月31日の為替相場で算出)

  FIAT 500e
(米国限定)
FIAT 500
(米国仕様)
FIAT 500
(日本仕様)
価格 約359万円 約163万2000円 199万8000円~

ただし、カリフォルニア州では購入補助金制度があり、100万円以上が補助されるそうだ。また、FIAT 500eの販売においてはリース*24制度もお得に設定されていて、3年ならば月額8000円程度で済むらしい。

内観と外観の優れたデザインはお墨付き、動力性能にも優れたFIAT 500eである。しかし、現状では前述した航続距離の関係で、自宅から半径50km程度のみでの使用に絞り、勧めているようだ。日本のFIAT 500愛好家は近未来にハイブリッド版、10年後くらいに現行のガソリン車に見劣りしないFIAT 500eに出会うことができるだろう。

FIAT 500eは存分に技術革新を果たしてもらいたい。しかし、脈々と息づいた「らしさ」は堅持してほしい。そして、「変わらない美しさ」の新風を吹かせるべきだ。

それならば、きっと「e」は終わりではなく、優良を意味することになるはずだ。

(出典:Fiat Chrysler Automobiles

*1:〔和製語 canvas+top〕屋根がキャンバス地で張られ,折り畳みや取りはずしが可能な自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:手動で変速装置の操作を行う自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【bumper】急激な機械的衝撃を緩和するための装置。ゴム・ばね・空気・油などの弾性を利用して,衝撃の運動エネルギーを吸収する。車両・銃砲など各種機械装置に組み込まれる。自動車のバンパーもこの一種。緩衝器。ダンパー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【electric】「電気の」「電気で動く」の意。他の外来語とともに用いる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【engine】種々のエネルギーを機械的力または運動に変換する機械または装置。機関。発動機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【bonnet】自動車の前部の,エンジンを収容する部分のカバー。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【motor】磁場内で電流が受ける力を応用して,電気エネルギーを回転などの機械エネルギーに変える装置。電動機。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【unit】規格化された部品。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【transmission】自動車などの歯車式変速装置。トランスミッション。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【lithium】1族元素(アルカリ金属)の一。元素記号 Li 原子番号3。原子量6.941。銀白色の軟らかい金属。比重0.534で金属中で最も軽い。炎色反応は紅色を呈する。原子炉の制御棒,合金などに用いる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【ドイツ Ion】〔ギリシャ語で「行く」の意〕電気を帯びた原子や原子団。中性の原子や原子団が電子を得たり失ったりすると,負または正の電気を帯びた粒子が得られる。正の電気を帯びたものを陽イオン(カチオン)といい,負の電気を帯びたものを陰イオン(アニオン)という。電解質の溶液に電圧をかけると,陽イオンは陰極に向かい,陰イオンは陽極に向かって移動し,電流が流れる。ファラデーが命名。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【battery】電池。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【kilowatt】仕事率・電力の単位キロワットを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:【ドイツ Pferdestärke】馬力を表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【torque】回転軸のまわりの,力のモーメント。棒をよじる力や原動機の回転による駆動力を示すのに用いる。ねじりモーメント。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16:【フランス kilogrammètre】エネルギーまたはトルクの重力単位キログラムメートルを表す記号。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:【gasoline】比較的低沸点(摂氏30~200度)の炭化水素の混合物。ガソリン-エンジンの燃料などに使われる。揮発油。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:【Italia】ヨーロッパ南部の共和国。地中海に突き出た長靴形のイタリア半島と,サルデーニャ・シチリアなどの島から成る。鉄鋼・自動車・機械などの工業が発達し,ブドウ・オリーブなどの産も多い。古代ローマ帝国の発祥地で,476年西ローマ帝国の滅亡後,多くの都市国家と両シチリア王国・ベネチア共和国などの乱立が続いたが,1861年イタリア王国が成立し,70年半島の統一を達成する。1947年王制を廃して共和制をしいた。古代ローマの史跡や風光明媚(めいび)なベネチア・ナポリなどがあり世界的な観光国。住民はイタリア人で,大部分がカトリックを信奉する。首都ローマ。面積30万1千平方キロメートル。人口5930万。イタリー。正称,イタリア共和国。〔「伊太利」とも当てた〕

*19:【volt】〔物理学者ボルタの名にちなむ〕電位差(電圧)・起電力の SI 単位。1アンペアの電流が二点間で1ワットの電力を消費するとき,その二点間の電位差を一ボルトとする。記号 V/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*20:【California】アメリカ合衆国の太平洋岸の州。同国の最多人口の州。中部の平野はブドウ・オレンジなどを産する大農耕地帯。ロサンゼルスおよびその近郊は航空機・機械・自動車などの製造が盛んな大工業地帯。サンフランシスコを中心に日系人が多い。1850年に州となる。州都,サクラメント。加州。〔「加利福尼亜」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【clean diesel】NOx や粒子状汚染物質を排ガスとしてほとんど出さないディーゼル-エンジン車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:【hybrid car】複数の動力源を用いて走行する自動車。排気ガス規制地域を電気で,規制緩和地域をガソリン-エンジンで走る自動車など。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:〔オランダ dollar(ドルラル)から〕アメリカ・カナダ・オーストラリア・ホンコン・シンガポールなどにおける貨幣単位。多く,アメリカ-ドルのことをいう。ダラー。記号 $/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*24:【lease】料金を取って,物を貸すこと。土地や建物,大型の機械や設備などを,比較的長期にわたって貸すことをいう。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)