人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

スズキ・ジムニーとFIAT 500に脈々と流れる確固たる信念

前方から見た1970年式の若草色のジムニー

FIAT 500は発売から10周年を迎えた。2016年の小規模な変更を除き、初志貫徹してきた骨のある車種だ。それに対抗し得る新車の国産車は、20年ぶりの全面刷新のうわさが立つスズキ・ジムニーをおいて他にないだろう。そこで今回は、この2車を比較してみたい。

2017年9月20日:用字用語の整理。

FIAT 500、ジムニーそれぞれの生い立ち

1972年式の黄色のジムニーの内装

FIAT 500の先代はNUOVA(ヌォーヴァ)500であるのは周知の通りだ。今回比較するスズキ・ジムニーは1970年で、NUOVA 500は1957年の登場であるから、年代的には13年の開きがある。

ジムニーは、1967年に存在したホープ社のホープ・ON(オー・エヌ)の製造権をスズキが買い取ったことから始まった。当時のオフロード*1型4WD*2といえば、三菱がライセンス生産を行なっていたジープやトヨタ・ランドクルーザーがあった。しかし、どちらも2200cc~3900ccの大排気量エンジンを搭載しており、一般人が購入できる代物ではなかった。

そこへ「小粒でもぴりりと辛い」本格的なオフロード型4WDの車体に、360ccという当時の軽自動車規格のエンジンを搭載した自動車が現れた。それこそが、ホープスター・ON360であり、後のジムニーである。NUOVA 500も従来のNUOVA 600のエンジンを小型のものに換装し、一般人に手の届く車種へと転じた点がジムニーと共通している。

現代のFIAT 500

港に停車している前方から見たFIAT 500リーヴァ

まず初めに述べたいのは、NUOVA 500が登場した1957年と、FIAT 500へと生まれ変わった2007年の「差」である。大衆車と言えど、その性能は月とスッポンである。言うなれば、当時のスポーツカーと現代の大衆車の競争は、後者が勝ちを制するわけだ。

当時のNUOVA 500は、エアコン*3はもちろんのこと、パワーステアリング*4やパワーウインドー*5といった装備は一切ない。全車に標準装備されていたキャンバストップ*6も、エンジンの騒音を外部に逃がすために付いていたようだ。よしんばこれと同じ仕様でFIAT 500を現代に復活させたとしても、大半の人は敬遠するであろう。

時代の潮流に乗り、FIAT 500も快適性・走行性能が設計された。その中で、FIAT 500は極力小さな車体寸法、「車を動かしている実感」を掻き立ててくれるツインエアエンジンなどが採用されているのが最大の魅力である。現代で再現できる最大限の「味」に「おしゃれ」というスパイスを配合して生まれた、希少の名車である。

現代のジムニー

悪路を走る2017年式紺碧(こんぺき)色のジムニー

対するジムニーも、初代は武骨そのものであった。初代の型式であるLJ10は25馬力で、空冷直列2気筒2サイクル359ccエンジンを搭載していた。その室内の特徴といえば、三菱・ジープとたがわぬ鉄板むき出しのインパネ*7、ビニールの座席という出で立ちである。こちらもエアコン、パワーステアリングはなく、ステアリング操作を軽くするために細く大径のハンドルが備えられていた。

ジムニーは1998年に2度目の全面改良が行われ、現行型になっている。初代や2代目と比較すると、本格的4WDながらも、その快適性・走行性能は比べ物にならないほど向上している。旧式ジムニーの愛好者も多いが、現状の環境や交通事情を踏まえれば、最低限の快適性を備えておく余地はあるだろう。

FIAT 500と比較してみると、現行のジムニーは1970年当時の面影を色濃く残している。例えば国産車で唯一となってしまった硬派な四輪リジッド*8式サスペンション*9や、独立したフレーム*10を備えた車体である。新型もうわさが流れるジムニーであるが、1998年の登場から早19年、あと1年でNUOVA 500の生産期間と同年数に並ぶ。

まとめ

FIAT 500とNUOVA 500

FIAT 500とジムニー、その原型を極力守っている設計や生産期間の長さといった共通点から、今回この2車種を取り上げてみた。本来ならば、FIAT 500に対するスズキの競合車種の筆頭候補は、FIAT 500と同じく世界的に好調なスイフトを挙げるべきであろう。しかし、好評である幾つかの評価は肯定するものの、経済的な小型車である以外に特筆すべき点が見当たらない。

今年はFIAT 500が誕生してから10年になる。そして、世界累計販売200万台を達成するようである。対するジムニーもアジアを中心にした世界各国で販売され、登場から31年目の2001年に世界累計販売台数200万台を達成した。FIAT 500は売り上げの速度で3倍も水をあけたことになる。ただ、特殊車両に間近いジムニーとの差異は、むしろ「わずか」と言えるのではないだろうか。

近年の四輪は時代の波や流行に翻弄されたている感がある。しかし、FIAT 500やジムニーのような確固とした原型がある車種は「ぶれ」が非常に少ない。もっとも、これは特例であって、すっかり変わってしまった車種も少なくない。憧憬の的であるBMW・MINI(ミニ)も、往年のファンから失望のため息が漏れていると耳にする。また、かつて硬派の筆頭格だったランドクルーザーも、「オフロードにめっぽう弱いSUV*11」と冷やかされているのは残念至極である。

その点、FIAT 500やジムニーからは芯(しん)を一心不乱に守る「骨太な方針」が、ひしひしと伝わってくる。FIAT 500もジムニーも「思い出の形」をどれだけ死守してくれるのだろうか。期待と不安が交錯する今日この頃である。

人間も自動車も「ぶれない」ことは、心に響くと「ブレーン*12」で考えた次第だ。

(出典:Fiat Chrysler Automobilesスズキ株式会社

*1:【off-road】舗装されていない道。また,公道でない脇道。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:〔four-wheel drive〕自動車で,前後の四つの車輪すべてに駆動力を伝える方式。4WD 。四駆。全輪駆動。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:エア-コンディショナー(空調設備)・エア-コンディショニング(空調)の略。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【power steering】自動車で,エンジンで駆動されるオイル-ポンプの油圧や電動モーターを利用してハンドル操作にかかる力を軽減する装置。ハンドル操作が軽くなる。パワステ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【power window】自動車の窓ガラスをスイッチにより自動的に開閉する装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:〔和製語 canvas+top〕屋根がキャンバス地で張られ,折り畳みや取りはずしが可能な自動車。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:〔instrument panel から〕自動車などで,運転席に設けた計器盤。多く,計器や操作スイッチを並べた前面のパッド入りパネル全体をさす。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【rigid】厳密,厳格であるさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【suspension】自動車などで,車輪と車体をつなぎ,路面からの衝撃や振動が車室に伝わるのを防ぐ装置。懸架装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【frame】自転車・自動車などの車体枠。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【sport utility vehicle】スポーツタイプ多目的車の総称。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【brain】頭脳。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)