人生は旅だ

よもやま話に花が咲く

FIAT 500を国産コンパクトのトヨタ・パッソと比較してみる

旧型FIAT 500と新型FIAT 500

日本でもおなじみとなった現行FIAT 500はおしゃれさが売りだが、この車は本来コンパクトな庶民の足、大衆車である。そこで、サイズ的に一番近く、設計的にも国産コンパクトの王道といえるトヨタ・パッソとダイハツ・ブーンをFIAT 500とはかりに掛けてみたい。

2017年10月24日:用字用語の整理。

FIAT 500との比較でパッソあるいはブーンを選ぶ理由とは?

黄色のダイハツ・ブーン

FIAT 500の外寸は、軽自動車*1よりは大きく、国産コンパクトよりも少し小さい。

FIAT 500の対抗車としては、価格的な比較ならBMW・MINI(ミニ)やAudi(アウディ)・A1(エーワン)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)・POLO(ポロ)などだろうが、国産コンパクトとの違いを比較するのも一興であろう。

国産のコンパクトは今や激戦区で、ハッチバック*2タイプ、ミニバン*3タイプ、スポーツタイプ多目的車(SUV)などがひしめいている。日本には「軽自動車」という特有の種別があり、そこには排気量や外寸の制限もある。

一方、「コンパクトカー*4」という名称は、業界が名付け、明確な定義はない。そして、現在では全幅1700mmを超える車種も、コンパクトカーと呼ばれることもあり、混沌(こんとん)至極である。

過去の実績から鑑みて、コンパクトカーの王道とは、ハッチバックの小型車で、外寸が全長3700 × 全幅1650mmくらいの簡略で潔い車種のことであると思う。この王道の定義に見事に当てはまるのがFIAT 500であり、国産車の一例ではトヨタ・パッソとダイハツ・ブーンなのだ。

パッソとブーンは、2016年に3代目の新型が登場。国産コンパクトでは最も外寸が小さい1車種である。開発から生産まで全てダイハツが行ない、トヨタへOEM*5供給されるモデルである。

FIAT 500ならびにパッソとブーンをスペックから読み取る

緑色のダイハツ・ブーン

まずは、FIAT 500ならびにパッソとブーンの主要諸元を一覧にしてみた。

  FIAT 500 パッソ/ブーン
ボディー形状 3ドアハッチバック 5ドアハッチバック
乗車定員 4名 5名
ボディーサイズ 3,570 × 1,625 × 1,515mm 3,650 × 1,665 × 1,525mm
ホイールベース 2,300mm 2,490mm
重量 990~1,040kg 910~960kg
エンジン 1) 4気筒8バルブ1,240cc
2) 2気筒8バルブ875cc ツインエア
3気筒12バルブ996cc
ボア × ストローク 1) 70.8 × 78.8mm
2) 80.5 × 86.0mm
71.0 × 83.9mm
圧縮比 1) 11.1:1
2) 10.0:1
12.5:1
最大出力 1) 51kw(69PS) / 5,500rpm
2) 63kw(85PS) / 5,500rpm
51kw(69PS) / 6,000rpm
最大トルク 1) 102Nm
(10.4kgf.m)
/ 3,000rpm
2) 145Nm
(14.8kgf.m)
/ 1,900rpm
92Nm
(9.4kgf.m)
/ 4,400rpm
トランスミッション デュアロジック(5速セミAT) CVT(無段変速機)
JC08モード燃費 1) 19.4km / L
2) 24.0km / L
2WD:28.0km / L 4WD:24.4km / L
サスペンション前輪 マクファーソンストラット (スタビライザー付) マクファーソンストラット
サスペンション後輪 トーションビーム式 (スタビライザー付) 2WD:トーションビーム式 4WD:トレーリングリンク
ブレーキ(前) ディスク ベンチレーテッドディスク
ブレーキ(後) ドラム ドラム
価格 1,998,000円~2,797,200円 1,150,200円~1,830,600円

外寸は、ほんのわずかにパッソとブーンが大きいが、大部分で似通っている。大きな違いは、パッソが5枚ドアの5人掛けで、対するFIAT 500は3枚ドアの4人掛けである点だ。FIAT 500の後部座席は、ゆったりと落ち着けるスペースは確保しているものの、乗降は助手席をスライドさせなければいけないので、使い勝手はパッソが上である。

構造を見てみると、両者ともにフロント横置きエンジンの前輪駆動、サスペンション*6はコンパクトカーの王道を行く後輪が車軸式になっている。

サスペンションは、本来四輪それぞれ独立して動かした方が路面追従性が良く乗り心地にも貢献するのだ。しかし、影響の少ない後輪は、コンパクトカーにおいて簡略化のために左右後輪を鋼管などでつないだ車軸式がよく用いられるのである。この辺りの構造は、FIAT 500もパッソとブーンも似たり寄ったりである。

エンジンについては、FIAT 500の標準である1240ccエンジンは、1985年に開発されたものだが、現在に至るまで年々熟成を重ねているもので、扱いやすさ重視の、基本に極めて忠実なエンジンである。

一方、パッソとブーンの996ccエンジンは、ダイハツにより開発された先代の改良版である。ガソリンを噴射するインジェクターを気筒あたり2本にしたり、排気ガスの再利用によって燃費を一段と高めたりした。すなわち、日本の高い技術力によって生み出されたコンパクトカー用の最新標準エンジンである。

FIAT 500、パッソとブーンの総評

黄色と緑色のダイハツ・ブーン

以前、先代のパッソを3日間ほど貸し出して試乗したことがある。ベンチシート*7なので車内は広く感じ、座り心地も使い勝手も良い。

走り出してみると、初っぱなはもっと大きな車格の車を運転しているような、随分ずっしりとした感覚を受けた。だが、ちょっとした違和感も、30分も乗れば消え失せ、乗りやすさが際立った高評価に取って代わった。コンパクトカー故の小型ボディーとハンドル切れ角の大きさにより、窮屈な場所も苦労なく入っていくことができる。操作感も従順で、街乗りでは非常に心地よく走ってくれたのだった。

コンパクトカーの利点であった軽快な操作感が影を潜め、次第に安定感重視の設計になっているのが、現代のコンパクトカーの標準だと気付かされる結論に行き着いた。新型となったパッソとブーンも、その延長線上にあると考えて差し支えはないだろう。

FIAT 500の1240ccエンジン搭載車、そして、パッソとブーンの走りは、どちらも「走らせる楽しみ」を与えるのではなく、あくまで実用に徹した扱いやすさを持つものである。

総合的には、最新技術の搭載されたパッソの方が燃費もよく、出力的にもFIAT 500の1240ccと同等を絞り出しているので、パッソに軍配を上げたいと思う。

価格的には、パッソの最上級グレードであるMODA「G package」4WD仕様でも、FIAT 500のベーシックグレードFIAT 500 POPよりも安く、かなり大幅な開きがある。

しかしながら、「それでもFIAT 500がいい」と感じさせるものがある。それはいったい何だろうか?

まとめ

FIAT 500のエンブレム

自動車というものは、外観がとても大事である。一目ぼれではないが、「これは面白そう」とか「この車で出掛けてみたい」とか思わせる要素が必要不可欠なのだ。

パッソとブーンに試乗して、とても扱いやすく便利かつ良い車であると感じた。だが、数日たって外観とその特徴を思い返しても、何故か思い出せないのである。

人でも同様のことが当てはまることがないだろうか。おとなしく良い人よりも、あくの強い人の方が記憶に残ったりする。そして、その自己表現が自分の嗜好(しこう)に合致すれば、かけがえのない親友になったり、恩師になったりする。

かつての国産コンパクトの名車である「スバル・360」などは、外観を含め、大真面目に他に類を見ないような作り方がなされた。それ故に、50年が経過した今にあっても、多くの人の心に残り続けているのである。

パッソとブーンは優等生だが、ずっと忘れないだろうか。その観点で見ると、FIAT 500は、人々の心に残っている先代NUOVA(ヌォーヴァ)500の再来である。周知の「あのFIAT 500」だからこそ、この車に乗ってみたいと所有欲をかき立てるのだろう。

ここは一つ、トヨタが昔の「パブリカ」くらい強烈な個性のコンパクトカーを復刻させてもよいのではないだろうか。

アルコールがガソリン代わりの今、がりがりに痩せたあの頃を「復刻」させたいと念ずるのは私だけではないはずだ。

(出典:Fiat Chrysler Automobilesダイハツ工業株式会社

*1:全長4メートル 未満,全幅1.48メートル 未満,全高2メートル 未満,エンジン総排気量660 cc 未満の自動車。法制上種々の点で義務が軽い[項目採録:2011年02月]/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【hatchback】ファーストバック形式の乗用車のうち,後背部に船のハッチのようなはね上げ式のドアが付いているもの。リフト-バック。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【minivan】貨物兼用の箱型の乗用車。ステーション-ワゴンより少し大きなものをいう。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【compact car】小さなサイズの乗用車。アメリカでエンジンや車体を小さくした乗用車につけられた呼称。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【original equipment manufacturing】取引先の会社の商標で販売される製品の受注生産。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【suspension】自動車などで,車輪と車体をつなぎ,路面からの衝撃や振動が車室に伝わるのを防ぐ装置。懸架装置。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【bench seat】自動車の座席で左右それぞれに分かれていないもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)