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FIAT 500とBMW・MINI(ミニ)、それぞれの方向性を探る

町中を駆け抜ける赤色のMINI 3 DOOR

1886年、日本が明治の時代だったころに自動車の原型は生まれた。その後、二度の大戦とオイルショックなどを体験した。その苦難からはい上がるために大きな功績を残した名車たち。その2世、3世として現代にいぶくFIAT 500とBMW・MINIの変遷を見比べてみたい。

2017年9月20日:用字用語の整理。

NUOVA(ヌーヴァ)500とMINIの先代を尋ねる

斜め前方から見た1963年式の若草色のAustin Mini Cooper S

日本にも名車と称賛される自動車があまたある。しかし、世界的な知名度を誇る名車の多くが、大衆車として誕生した車であることは興味深い。今回触れるのは車好きでなくても耳にしたことがあるはずだ。イタリアのFIAT(フィアット)500、英国のMINI、ドイツのVolkswagen(フォルクスワーゲン)・Beetle(ビートル)、フランスのCitroën(シトロエン)・2CVなどである。

こういった大衆的な名車に共通した特徴といえば、不可能とも思われる開発目標を掲げ、それに向けて真剣に取り組んで設計されたことであろうか。質実剛健で機能美にあふれているが、各車は漏れなく愛嬌(あいきょう)も兼ね備えているのが面白い。

FIAT 500の先代にあたるNUOVA 500は、1957年のイタリア生まれで20年間生産された。収穫されたばかりのワインはイタリア語でヌーヴォと称されるが、「新しい」という意味である。このヌーヴォの女性形が「NUOVA(ヌーヴァ)」とのことである。NUOVA 500は女性名詞だったのかと、改めて感心する。

話がそれたが、対するMINIは英国生まれである。その生産期間は1959年~2000年までとなる。NUOVA 500の20年も相当に長いが、MINIはその倍に当たる40年間生産された。それだけに、先代の知名度となれば、やはりMINIに軍配が上がるだろう。

MINIとMINI COOPER(クーパー)がよく混同されるが、車名はあくまで「MINI」で、技術者のジョン・クーパー氏が手掛けたレース用MINIが、MINI Cooperと呼ばれる。NUOVA 500でいうところのABARTH(アバルト)である。

先代のNUOVA 500とMINIの特徴

前方から見た1963年式の薄い赤身の黄色のNUOVA 500

両方とも2ドアハッチバック*1で4人乗りの構成は共通している。NUONA 500はリヤエンジン・リヤドライブのRR*2方式、初代MINIはフロントエンジン・フロントドライブのFF*3方式が採用されている点が大きく異なる。

  外寸 (mm)
NUOVA 500 全長2970 × 全幅1320 × 全高1325
初代MINI 全長3051 × 全幅1410 × 全高1346
日本の軽自動車規格 全長3400 × 全幅1480 × 全高2000

NUOVA 500の外寸は全長2970mm × 全幅1320mm × 全高1325mmである。対するMINIも全長3051mm × 全幅1410mm × 全高1346mmであり、必要最小限の寸法といった具合だ。

現在の日本の軽自動車を引き合いに出すと、その規定寸法は全長3400mm × 全幅1480mm × 全高2000mm以下である。NUOVA 500、初代MINIともに軽自動車規格よりも極小である。

日本の軽自動車はこの規定寸法内でいかに室内を拡張するかに心血を注いでいるように映る。しかし、その弊害で、どれも似たり寄ったりの外観になってしまいがちだ。

初代MINIに触れたことがある方はご存じだろうが、鉄板がかなり厚く、堅固な出来を感じ取ることができる。また、古い車は衝突安全規制も緩かったため、特段に横の窓面積が広く取られおり、小ささのわりに開放感があるのも美点の一つである。

初代MINIの997ccエンジンをチューンナップ*4した車体に試乗したことがあるが、掛け値なしに楽しい。フロントのバネにラバーコーンというゴムの塊を使用しているため、ハンドル操作に対して打てば響くような回答でとても軽快だ。それに加えて改良されたエンジンだったため、まるで「実物大のゴーカート*5」のようであった。

現在のFIAT 500とBMW・MINI

側方から見たうぐいす色のFIAT 500 POP

NUOVA 500の正式名称は、FIAT NUOVA 500である。その生誕50周年を記念して2007年に登場したのが、FIAT 500である。駆動方式はFFに改められたものの、2010年投入の875ccツインエアエンジン搭載により、ぐんとその魅力を増した。

また、1400ccターボ*6エンジンを積むABARTH 695系もあり、楽しさを追求したホットハッチ版も健在だ。

MINIは初代の生産を行なっていたローバー社をBMWが買収。2001年、42年目にして初めての全面改良となった。FIAT 500と異なるのは車格を大きく引き上げたことと、2001年以降に既に2回もの全面改良が行われている点である。

現在新車で売られているMINIは2013年に登場したものである。BMWの傘下に入った2代目MINI・3代目MINIは、「兄弟」であることを判別できないほど、変現したフル*7モデルチェンジ*8であった。しかし、4代目の外寸は一層大でかくなり、もはやFIAT 500と同類項ではなくなってしまった。

まとめ

町中に停車する山吹色のMINI COOPER S 3 DOOR

現行型のMINIを目にするたびに、「でっかい」と引いてしまう。国産車においてもモデルチェンジの後に小型化した車種は異例ではないだろうか。先日もホンダから新型のシビックなるものが発表されたが、その巨大化した変わりぶりに目を疑ってしまった。

FIAT 500とBMW・MINI。どちらも憧れの的として紹介される名車であろう。では、FIAT 500に引かれる理由をMINIと比較しながら掘り下げてみたい。

  外寸 (mm)
FIAT 500 全長3545 × 全幅1625 ×1515
MINI 全長3821 × 全幅1727 × 全高1415

それは「祖先に忠実」であるが故ではないだろうか。FIAT 500の外寸は、全長3545mm × 全幅1625mm ×1515mmである。対するBMW・MINI、全長3821mm × 全幅1727mm × 全高1415mmである。全幅が1700mmを超えると、日本の規格でいう「3ナンバー」ボディー*9となり、初代MINIより30cm以上も脇腹が肥えてしまったようなものである。

BMW・MINIでは「MINI」の名称が、LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)などと同じ「ブランド」になって独り歩きしてしまっている感がある。初代の特性だったかわいらしさが雲散霧消してしまい、敷居が高くなってしまった。つまり、今のMINIは過去のMINIの延長線上で捉えるべきではないのだ。FIAT 500も同じ傾向があることは否めないが、庶民的な雰囲気がいまだ色濃く残されているのだ。

初代MINIといえば、1980年の映画「名探偵ベンジー」に描かれたロンドン*10の風景がいつも浮かんでくる。雨降るロンドンを元気よく疾走する白のMINI、あれこそが個人的に思い描くMINIの原風景なのかもしれない。MGBも登場する原題「Oh! Heavenly Dog」、ストーリーは若干詰めが甘いかもしれないが、ぜひご覧いただきたい。

イタリア産の赤ワインが「変わらない新しさ」を渋味とともに、そっと語り掛けてくるかもしれない。

(出典:Fiat Chrysler AutomobilesMINI Japan

*1:【hatchback】ファーストバック形式の乗用車のうち,後背部に船のハッチのようなはね上げ式のドアが付いているもの。リフト-バック。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【和製語rear-engine, rear-drive】後部エンジン後輪駆動。自動車の後部に搭載したエンジンによる後輪駆動方式。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【和製語front-engine, front-drive】自動車のエンジンの動力が,後輪にではなく前輪に伝わる方式。

*4:【tune-up】機械を良好に作動するように仕上げること。普通の乗用車を高性能車に改造すること/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【go-cart】遊園地などにある,小形の娯楽用の自動車。商標名。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【turbo】排ガスを利用してタービンを回し,混合気を強制的にシリンダー内に送り込んで圧力を高める,エンジンの補助装置。出力・トルクを高め,併せて燃費向上に役立つ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【full】限度いっぱいであるさま。余すところのないさま。最大限。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:商品などのデザインや性能を変えること。自動車・機械などの型式(かたしき)変更。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【body】〔「ボデー」とも〕自動車の車体,航空機の機体,船舶の船体など,本体部分の称。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【London】イギリスの首都。イングランド南東部テムズ川下流両岸に広がる河港都市。経済的中心のシティーと,政治的中心のウェストミンスターと,繁華街のウェスト-エンドを核として次第に市域を拡大。世界的な貿易・金融の中心で,食品・衣服・印刷などの工業が発達。バッキンガム宮殿・ウェストミンスター寺院・ロンドン塔・大英博物館などがある。〔「倫敦」とも当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)