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勝ち負けを超える!特筆すべき高校野球のフェアプレー精神

[夕日に照らされるボール

高校野球では真剣勝負の真っ最中でありながら、相手チームを思いやるフェアプレーを目にすることがある。雌雄を決する緊迫した場面でも忘れられることのない誇り高き気持ち。それは球児だけでなく、見守る者たちの心をも動かす崇高なものである。

敵味方を超えた正々堂々たる振る舞い

2017年7月24日夏の選手権埼玉大会準決勝、春日部共栄高校と浦和学院高校が対戦した。

四回裏浦和学院高校の攻撃中、2年生ながら先発好投していた春日部共栄・大木喬也投手の左膝へピッチャー*1ライナー*2が直撃してしまう。大木投手はあまりの激痛でマウンド*3に倒れ込み、球場は騒然となった。

その様子を見て、いち早く駆け付けたのは相手チーム*4の三塁コーチ*5を務めていた浦和学院・赤岩航輔選手だった。赤岩選手は持っていたコールド*6スプレー*7で患部を冷却し、ベンチ*8まで肩を貸して運んだのである。球場からは赤岩選手の義勇をたたえる歓声と拍手が惜しみ無く送られていた。

元々埼玉県を代表する強豪校同士の戦い、この行動をきっかけに観客をも巻き込んだ白熱の好ゲーム*9となった。大木投手も九回途中まで力投、ファインプレー*10の応酬となった試合は、浦和学院高校が九回さよなら勝ちを収めて決着を迎える。そして、試合後の整列の際に観客が拍手喝采で両チームの健闘を激賛。その光景は高校野球の素晴らしさが凝縮されており、大きな感動を生んだ。

甲子園出場を果たした瞬間にも忘れなかった心遣い

2016年7月24日夏の選手権大会島根大会、出雲高校と立正大淞南高校の決勝戦。

春夏初の甲子園出場を決めた出雲高校の林将広捕手にも注目が集まった。九回表、最後のバッター*11を打ち取り、マウンドに歓喜の輪が広がる。ところが、林捕手は一人だけ蚊帳の外だった。なぜなら、落ちていたバット*12を拾って相手ベンチまで届け、深々と一礼して手渡していたからである。

本来であれば初の甲子園出場の味を噛み締めるべく、喜びを爆発させて当然のところだ。しかし、弱冠20歳に満たない青年は高ぶる感情を抑え、相手チームへの配慮を決して忘れなかったのだ。また、しっかりと礼節を重んじた態度に、多くの高校野球ファンが、すがすがしい気分にさせられたはずだ。

出雲高校の植田悟監督は選手たちに、相手選手のマスク*13やバットが落ちていたら、拾って返すように指導しているそうだ。これは他校でも意識されているが、夢がかなった瞬間でも実践できるのは並一通りではない。指導者と選手たちの一枚岩の団結を垣間見る「誉れ高きプレー*14」であった。

その出雲高校の甲子園初戦の相手は出場18回を誇る強豪校の智弁学園。しかし、1対6と善戦むなしく敗れ去ってしまった。試合終了後の整列では思う存分力を出し切った充実感からか、選手たちに笑顔も見られた。そして、勝者である智弁学園が校歌を歌い終えると、拍手をして称する姿は感動を与えるものだった。

植田監督が満足げに見詰める選手たち。そして、その先には「試合に勝つことよりも大切なこと」が間違いなく見えていた。

応援団も公明正大な行動を忘れていない

八回表2死満塁、智弁和歌山高校一打同点の好機。守る東海大相模高校はたまらずにマウンドに伝令を送る。今春の選抜高等学校野球大会*15準決勝でのことだ。

自慢の強打で追い詰める智弁和歌山高校。応援団も勢いづき一気呵成(かせい)に逆転を後押しする場面であった。ところが、応援団の吹奏楽部が演奏の音量を下げたのだ。生徒たちの声援も明らかに小さくなっている。応援団が不慮の出来事に見舞われたのを疑い、球場全体がどよめいた。しかし、観客はその理由をすぐさま知ることになる。応援団は伝令を送った東海大相模高校の指示が、自分たちの応援でかき消されるのを避けたのだ。

一時5点差まで開いた状況から同点に追い付き、逆転まで期待できる絶好機だ。さらに、相手チームが窮地に立たされ、伝令を送ろうものなら、ますます応援の熱が最高潮に達すべきところだ。しかし、智弁和歌山高校の応援団は追い打ちをかけるどころか、相手への気遣いを優先したのだ。マウンドの輪が解け、伝令がベンチへ戻ると応援は一気に大音量に戻った。

試合は延長戦の末に智弁和歌山高校が勝利する。その試合結果もさることながら、相手への思いやりを忘れない応援団の行動にも魅了させられた試合となった。実はこの伝令の場面ではだけではない。智弁和歌山高校応援団は相手のエラー*16に歓喜することはないし、相手チームの校歌が流れているときには静かに聞き入り、終われば丁重に一礼をする。一挙手一投足に相手への敬意が感じられ、お互いが悔いなく持てる力を発揮できるように、大切な空間を壊さないように努めているようでもあった。

甲子園という「夢の大舞台」は選手だけでなく、周りも一丸となって紡がれていくことを再認識させられる至極立派な試合であった。

まとめ

春や夏の高校野球の時期を迎えると、高揚感とともに何かを思い出すかのようにテレビ*17や球場に足が向く。高校球児たちのひたむきな姿勢は人々をぐっと引き付ける。その理由の一つは双方が力を出し切り、悔いなく戦い抜くためのフェアプレー*18精神が選手や応援する生徒にも宿っているからであろう。つまり、相手への気遣いや敬意を持つことであり、ひいては野球そのものへの「愛」でもある。

だから、見る者は忘れていた感情を復活させ、気持ちを新たにできるのだ。フェアプレーとは正々堂々と戦うことと同時に、相手と野球に愛情を注ぐことである。

それを知り得たとき、もはや敗者は存在しない。人生のかけがえのない財産を手にするからだ。

*1:【pitcher】野球で、打者にボールを投げる人。投手。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*2:【liner】野球で、低い弾道で、一直線に飛ぶ強い打球。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*3:【mound】野球で、投手が投球を行う場所。土を盛って高くしてある。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*4:【team】二組以上に分かれて行う競技のそれぞれの組。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*5:【coach】競技の技術や戦術などを指導すること。また、それをする人。コーチャー。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*6:【cold】寒いさま。冷たいさま。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*7:【spray】液体を霧状にして吹きつけること。また、そのための装置。噴霧器。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*8:【bench】野球場やサッカー場などで、監督・選手の座る控え席。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*9:【game】競技。試合。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*10:【fine play】美技。妙技。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*11:【batter】野球で、打者(だしゃ)。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*12:【bat】野球・ソフトボール・クリケットなどで、球を打つ棒。また、卓球のラケット。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*13:【mask】野球やフェンシングで、面部をおおう防具。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*14:【play】競技。また、競技での動作。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*15:前年秋の地区予選大会の成績をもとに選抜された地区代表チームによって,毎年春に行われる高校野球の大会。第一回大会は1924年(大正13)。春の甲子園大会。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*16:【error】野球で、失策。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*17:画像を電気信号に変換し、電波・ケーブルなどで送り、画像に再生する放送・通信の方式の画像を再生する装置。テレビジョン受像機。テレビジョン受信機。テレビジョン。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)

*18:【fair play】運動競技で、正々堂々たるふるまい。/出典:広辞苑 第七版(岩波書店 2018年)