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野球だけを見るのはもう古い?楽しめる球場が主流に!

広島東洋カープの本拠地であるMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

地元だけではなく、関東にもファンを拡大している広島東洋カープ。横浜DeNAベイスターズは観客動員数が6年間で59%増の伸びを見せている。そして、両チームはここ数年の好成績も共通している。その手掛かりとなるのは「球場のエンターテインメント化」である。

野球に興味が無くても楽しめる球場

DeNAの前身である横浜ベイスターズは、かつて毎年赤字を繰り返す球団であり、観客動員に悩みを抱えていた。

しかし、2011年にDeNAに球団が譲渡されると着実に改善。見事黒字経営へと転換を果たす。そこにはどんな変化があったのか。

コミュニティ・ボールパーク化構想

入場券を買って球場へ来る客層は、その試合で対戦するチームのファンであったり、野球愛好家であったりというのが一般的な心象であろう。これまでのプロ野球は、こういった客層に支えられて運営が成り立ってきた。

しかし、横浜ベイスターズは、収入源だった地上波でのテレビ中継の減少や万年Bクラス*1の低迷が続いていたこともあり、お金を払ってでも観戦したいファンは減少の一途をたどっていた。そこで、これらの赤字要因を打破すべく、観客を呼び戻すためにどう再建していくかを思案した。DeNAは「野球好き」を呼び戻すだけでなく、野球に興味のない客層にも球場に来てもらう発想に至る。この着想が大きな転機となったのだ。

野球を前面に押し出すのではなく、まるで「ビールのおつまみ」のように考える。球場を大きいカラオケや居酒屋になぞらえて、これまでの既存の客に加えて、興味のない人たちも大勢で気軽に立ち寄り、楽しめる場所へと転換を図ったのだ。これがDeNAが掲げた「コミュニティ・ボールパーク*2化構想」である。

誰もが立ち寄りたくなる球場づくり

グラウンド*3を至近距離から観戦できるエキサイティング*4シート*5や、4~5人でテーブル*6を囲んで座れるボックスシート*7を増設。これまでの球場の椅子は横並びが当たり前だったが、多人数で観戦した場合、座席が離れていると非常に話しづらい。このボックスシートは通常の座席には無いテーブルを活用して、これまでの野球観戦の形式とは違った楽しみ方ができる。特に女性たちには受けがいいようだ。

ブルペン*8映像や試合のハイライト*9が見られる「ベースボールモニターBOXシート」は野球マニア*10にも喜ばれること請け合いだ。また、「スカイバーカウンター」と名付けられた、ビールサーバー付きの座席も、ゆったり飲みながら観戦するにはうってつけである。

根っからの野球好き用の座席も用意しながら、普段は熱心に野球を見ない客層も気軽に球場に行きやすい工夫が随所になされているのだ。

さらに、女性ファンの一層の獲得にも注力している。その取り組みの一つは、年間に数試合だが、来場した女性ファン全員にパステルカラー*11のユニホーム*12を贈る催しをしている。

また、球場の周囲に喫茶店が並ぶ一角を設けており、さまざまな銘柄のコーヒーを楽しむことができたり、チョコレートの食べ放題の企画も行われたりしている。また、「おしゃれな街横浜」を意識したグッズ*13も見逃せない。バットを作り直した雑貨や、シャツ専門店と共同制作した服の販売など、これまでの球場のグッズとは一味もふた味も違う。野球を見る以外にも、女性が足を運びやすくなる、そんな幾つもの要素が備わっている。結果として2011年にDeNAが球界に参入して以来、ファンクラブの女性会員数は約8倍にも伸びている。

楽しむための野球場マツダスタジアム

大リーグ*14では球場のことをただ試合を見る「スタジアム*15」として捉えるのではなく、「ボールパーク*16」と考える。多種多様なアトラクション*17を用意し、食事や座席なども充実することで、性別や年齢層などの垣根を越えて、誰もが楽しめる環境を整えている。

広島の本拠地であるマツダスタジアムは、そうしたボールパークを意識しており、これまでの球場にはない斬新な楽しさを提供しているのだ。

座席の種類の豊富さと過ごしやすさ

今やどこの球場でも設置されている目と鼻の先で見られる砂かぶり席やボックスシートはもちろんのこと、この球場にはバーベキュー*18ができる座席も用意されている。入場券とともにバーベキューに必要な道具や食材までもが一そろいで販売されているのだ。

打球が飛び込んできたらどうするのか気掛かりだが、焼き場はしっかりと奥の方に設置する配慮がなされている。また、横になりながら野球を観戦できる「寝ソベリア」なる場所もある。大きなソファ*19が用意されており、まさに寝そべりながら試合を見られるのである。広島といえば、立ったり座ったりを繰り返して応援する「スクワット*20応援」が名物だが、それを尻目に横になっているのもなかなか面白そうだ。

そして、座席に飲料を固定する道具が付いている球場はあるが、食べ物の置き場があるのは意外に少ない。ひいきにしているチームが得点すれば、大喜びして感動の瞬間を仲間と分かち合いたいものだが、飲食中だと食べ物をどこに置くべきか難儀してしまう。そんな心配もなく落ち着いて飲み食いできるので、この座席は特に女性からの評価が高そうだ。

あらゆる客層にも配慮された空間づくり

小さい子どもを連れて行くときに悩みの種になるのが、試合中に飽きが来てしまうことだ。子どもがぐずりだすと、野球観戦どころではなくなってしまい、球場から足が遠のいている方も多いのではないだろうか。

マツダスタジアムには子どもの遊具も充実しており、跳ねたり飛んだりして遊べる「ふわふわカープ坊や」は絶賛の支持を受けている。安心して応援に来れるので家族層にはありがたい気配りだ。

また、マツダスタジアムの特徴として、大通路の広さと解放感が挙げられる。球場内がぐるっと一周できるようになっており、従来の球場のように内外野で区切られたりグラウンドを遮ったりする部分もない。全方位からプレーを見ることができるのだ。

十分な広さも確保されているから、観客でごった返して移動に不自由することも少ない。自分の座席だけでなくトイレに行く道すがら好きな角度で立ち止まり、グラウンドを眺めることも可能だ。どの世代にも、この「心地よい解放感」は受け入れられそうだ。

また、大通路にはたくさんの売店が軒を並べており、お食事やおつまみの種類も豊富である。ビールの銘柄も多種多彩なので、ついつい飲み比べを口実に飲み過ぎてしまいそうだ。売店から戻ってときには千鳥足になっていないよう注意してもらいたい。

魅力的なグッズ販売

グッズの種類も充実している。今では他球団でも取り入れられている、パロディー*21Tシャツ*22が有名だ。かつて広島で指揮を執ったマーティ・ブラウン監督が、審判の判定に激高してベースを放り投げたことがあった。その姿をTシャツにしたことが始まりだ。

最初は選手のみに配られた限定品であったが、多数のファンから商品化熱望の声が届いたため、販売に至った経緯がある。そういったパンチの利いたTシャツもある一方で、サヨナラヒットやプロ初勝利などの選手が記録を残せば、直ちにTシャツにして販売をしている。

ファンとしてはレプリカ*23のユニホームだけでなく、思い入れのある選手が活躍したTシャツを着用できることで、選手やチームへの愛着がさらに増すはずだ。

また、チームカラー*24が赤色のため、還暦祝いのTシャツまであるのには驚かされた。背番号は言わずもがな「60」である。女性にとっても、手に取りたくなるようなかわいいグッズが増えている。中でも地元動物園と共同制作したTシャツや、有名キャラクターが広島のユニホームを着たグッズは人気であり、購入をきっかけにファンになった「カープ女子」も少なくないようだ。

まとめ

プロ野球人気の落ち込みや野球人口の減少などが危惧される中、プロ野球の観客動員数に限っては上昇傾向にあるという。それは各球団の経営努力が見事に結実したからであろう。その中でも広島やDeNAの観客の伸び率は最高位であり、他チームに対しても大きな影響を与えている。

「野球場」と「野球を見せるもの」が等しく結ばれる閉鎖的な視点から、野球に熱狂的な興味がなくても楽しめる場所へ、訴求の対象を広げたことが成功の主因になったはずだ。

「野球を軽視するな」という憤りの声も聞かれるようだが、地上波のテレビ中継が激減し、子どもの軟式野球の競技人口も減っている減る一方だ。若い世代が野球に触れる機会が少なくなりつつあるのは紛れもない事実である。

こうして球場に足を運ぶ機会が増えることは、将来の野球にとっては決して不利益になることはない。今回ご紹介したDeNAと広島が、ここ数年好成績を収めているのは、球場が観客で埋め尽くされているのと全く無関係ではないはずだ。

楽しめる球場の一環としてできた砂かぶり席。選手とファンを近づけたのは空間的な距離だけはなかったはずだ。選手も気づいたのではないだろうか。ファンが「10人目の選手」だということを。

*1:【B class】2 番目の等級。二流。B 級。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*2:【ballpark】野球場。特に,ただ観戦するのではなく,楽しむための野球場ということを強調して用いられる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*3:【ground】〔地面・地の意〕運動場。競技場。野球場。グランド。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*4:【exciting】見ている人を興奮させるさま。熱狂させるさま。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*5:【seat】座席。席。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*6:【table】机。卓。食卓。〔「洋卓」と当てた〕/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*7:【box seat】劇場・競技場などのボックスの中の座席。桟敷席。ボックス席。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*8:【bull pen】〔雄牛の囲いの意〕野球場の一角に設けた投手の練習場。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*9:【highlight】演劇・映画・スポーツ・ニュースなどの,最も興味をそそる場面やできごと。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*10:【mania】特定の分野・物事を好み,関連品または関連情報の収集を積極的に行う人。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*11:【pastel color】明るく柔らかい感じの中間色。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*12:【uniform】スポーツ選手が,各チームごとにそろえて着る運動着。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*13:【goods】商品。品物。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*14:アメリカのプロ野球で,最上位の連盟。ナショナル-リーグとアメリカン-リーグの二つがある。メジャー-リーグ。ビッグ-リーグ。MLB。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*15:【stadium】観客席のある競技場。野球場・陸上競技場など。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*16: 【ballpark】野球場。特に,ただ観戦するのではなく,楽しむための野球場ということを強調して用いられる。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*17:【attraction】主となる催し物に添えて行う,客を集めるための出し物。余興。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*18:【barbecue】〔丸焼きの意から〕(野外で)肉や野菜,魚などを直火(じかび)で焼きながら食べる料理。BBQ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*19:【sofa】背もたれがあり,クッションのきいた長椅子。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*20:【squat】〔しゃがむ意〕上半身を伸ばしたまま行う膝(ひざ)の屈伸運動。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*21:【parody】既成の著名な作品また他人の文体・韻律などの特色を一見してわかるように残したまま,全く違った内容を表現して,風刺・滑稽を感じさせるように作り変えた文学作品。日本の本歌取り・狂歌・替え歌などもその例。また広く,演劇・音楽・美術・映像などの作品にもいう。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*22:【T-shirt】〔平らに置くと T 字形になることから〕丸首で半袖のメリヤス編みのシャツ。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*23:【replica】複製品。特に,優勝カップなどの複製品で,長く記念できるよう,優勝者に贈与されるもの。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)

*24:〔和製語 team+color〕そのチームのもつ特色や雰囲気。/出典:スーパー大辞林3.0(三省堂 2014年)